はじめに
 本文の中に紹介します(故)成瀬大治に強く触発された私の人生は、大きな課題を背負い長い充電期間に入ってしまいました。
 師は一瞬にして燃え上がり灰になってしまいました。
 その燃え盛る火”成瀬イズム”を脳裏に焼き付けて、自分が歩く人生に自問自答してきました。
 ”成瀬イズム”に至っているとはまだ思えませんが、かなりの難題を解いてきたつもりです。
 ”成瀬イズム”に付けられた火は私の中で燃え盛っています。
 熱くて仕方ありませんからどこかに放火したい気持ちです。
 長い充電で頭がはちきれそうです。
 雷ぐらい落とせるかもしれません。
 溜まりきったダム湖の放水のようにコントロールできない大量の水が流れ出る様子を、安全な場所で眺めてください。

前文
 いきなり本題に入ってしまっても、「何をいきなり。」と跳ね除けられる事が心配です。
 これからの進め方は、どんな人間がいて、どんなことをしました。
 何故そんなことをしたのか、その為にどんな手法を用いたのか説明します。
 その後に、今後どうしたらいいのか、どういう方法があるのか探ります。
 更に、それは我々に人生にどう応用できるのかみなさんと一緒に考えてみましょう。
 私が通った道を、整理しながら話を進めていきますから、皆さんは、私が経験したことを疑似体験してみてください。
 私の所に、個人や、企業の経営者が遊びに来てくれます。
 遠いところから新幹線を使って泊りがけで来てくれる人もいます。
 その中の多くの人が、私と話をしていると元気になるそうなんです。
 「こんにちは、久しぶりです。
 元気をもらいに着ました。」と、私の口を軽くするためにおいしいお酒を持って来ます。
 帰りがけに、「ありがとうございました。おかげで元気になりました。」と、元気の花を持って帰ります。
 その花を花瓶に生けて、しばらくは元気なんですが、そのうち枯れて元気がなくなってくるようです。
 何度も花をもらいに来る人もいます。
 元気の花があるなら、元気の種があるのではないでしょうか。
 元気の種を植えておけば、何時までも元気でいられるし、もっと元気になるかもしれません。
 みなさんと、元気の種を探す旅に出ましょう。
 冒険の旅には付き物ですが途中には山もあり谷もあり、妖怪や魔物がが出てきて大変な目に会うかもしれません。
 がんばって乗り越えましょう。
 ”アレー、ちょっと待てよ。
 なんか聞いたような?なんか変だぞ!”
 ヘンゼルとグレーテル・ピノキオ・トムソーヤの冒険・インディージョーンズ・ドラえもん・・ 人が何か新しい事に挑戦しようとして作業を開始しますと、それまでには思ってもみなかった
 ことが一杯あることにどんどん気づき、頭の中が拡散し地獄が見えてしまいます。
 これは大変だと気づきますが、そこを踏ん張って作業を継続していますと、今までに拡散していたものがだんだんと集約してきて、地獄の中に天国の明かりが差しこんできます。
 そうなりますと勢いがつきますから、その明かりに向かって一気に作業を進めることによって天国に到達します。
 人はみんな天国に行きたいわけですが、天国の入り口の扉を空けるとそこにはまず地獄があって、それを見て慌てて出てきますと、永遠に天国へ行けないのではないでしょうか。


 幸せって誰もくれないんだよ。
 幸せは自分で努力して手に入れるものですよ。
 遠い過去から優しく教えてくれた人がいっぱい居たんです。
 あなたは、その人から何か買ってあげました?
 私は今から押し売りします。
 何度も読み返すような重たい内容もあります。
 ラン、ラン、ランでステップする内容もあります。
ヘンゼルとグレーテルもピノキオもトムソーヤものびた君もみんな逃げなかったんです。
 あなたも逃げないでくださいね。
自分の半生を振り返って・・冒頭から私事で申し訳ありません。
 1952年6月8日岡山県に生まれました。
 小学校の隣にあった幼稚園に通うようになって、小学生と一緒に1キロちょっとの通園が始まりました。
 間もなく、小学生の先輩が偉そうで気に入らない事を理由に、一人で通うようになりました。
 私は、小学生の時には結構いい成績でした。
 算数の応用問題で表彰されたこともありました。
 健康優良児で学校の代表にもなりました。
 中学に進むにつれて成績は中の上くらいで、人並みよりはちょっと上か位の事で満足していました。
 中学に入るとテストが頻繁に行われるようになります。
 算数で表彰されたこともある私が、方程式を暗記できませんでした。
 数学の問題が出たら、方程式を使わずに根底からその問題を解きました。
 私の頭の構造は根拠の無いものを全く受け付けないようです。
 歴史の丸暗記は当然出来ませんでした。
 何とか県立の普通科高校に進学して、その頃には中の下に位置していました。
しかし不思議な事に、物理だけは常に100点でした。
 大学進学は、先生の意見を押し切って工学部にギリギリ合格しました。
 進学はしたものの授業に出てもちんぷんかんぷん。
 麻雀と酒に溺れる学生生活でした。
 当然中途退学。
 親に怒られて建築の専門学校に入学しました。
 授業の内容はよくわかり、今度は優等生でした。
 気を良くした私は、アルバイトで稼ぐ事に専念するようになりました。
 中華料理のコックとして腕をふるっていた時、新しく開店する店のオーナーに先輩と二人で引き抜かれ、深夜まで働いていました。
 学校に行く日数も自分でコントロールして、仕事と勉強を両立していました。
 言い訳の様な自慢話ですが、我慢して聞いてください。
 設計図を描く授業も当然さぼっていました。
 先生が、「お前もう時間がなないけど、ちゃんと出来るんだろうな。」と心配して聞いてきます。
 「大丈夫ですよ。」と言いながら、皆が掛けた時間の数分の一で内容もしっかりしたものを仕上げました。
 それから先生は、何も言わなくなりました。
 社会に出てから学校の後輩と仕事の関係で知り合いました。
 その時の雑談の中で、設計図を異常に早く描く生徒が居た事を、先生が皆に言っていたと聞きました。
 「多分、それは俺の事だと思うよ。」どうも学校の伝説になっている様です。
 卒業年度の1学期の終わりに、担任の先生に呼び出されました。
 その理由は、「お前の成績は問題ないが、出席日数が足りない。
 この後2学期と3学期で1回でも遅刻か欠席したら卒業出来ない。
 そんなことは無理だから学校をやめろ。」「ちゃんと来ますから、やめないでお願いします。」それから、無遅刻無欠席で卒業できました。
 しかし、「お前のようなやつには就職は斡旋できない。」と断られ、自分で何とか地元の弱小ゼネコンを見つけ就職しました。
 やっと社会人として一歩を踏み出す事が出来た訳です。
 こんな私でしたが、社会に出てから遅刻と欠勤は未だに皆無です。
 ここで学生時代を整理しておきましょう。
 今になって分かった事ですが、テストには技があったようです。
 田舎の学校で、定年退職した講師や、程々の学校を出た先生からは、そんな技は教えてもらいませんでした。
 私の息子が、大学生で塾の講師をアルバイトにしています。
 その事を誇らしげに話したら、「そんなの、あたりまえだよ。」と、実にそっけない返事でした。
 「そうか、町の子や金持ちの子は塾に行って、この技を知っていたんだ。」今更、そんな事を後悔してもどう
しようもない事です。
 今からできる事は、自分の歩んできた人生を、如何に肯定して自己満足出来るように努力するかです。
 私の学生時代は、戦後教育に順応できなかった、しかもそれは完璧な落ちこぼれであったのではないでしょうか。
 その結果、固定概念の固定率が他の人達と比べて非常に少なかったのかもしれません。
 「お前は、頭は悪くないんだから、もっと一生懸命勉強しなさい。」と、いつも親に言われていました。
 ちょっと脱線しますが、私は良く例にとって話す事に、料理の話があります。
 「私は男ですし、料理は出来ません。」と聞きますと、 「あなたは、料理が出来ないのではなく、料理をした事がないんでしょ。」と聞き直します。

 大人になってからの私の人生に、何か変な芽が出てきました。
 多分、種はずっと有ったのかもしれませんが、発芽条件が整っていなかったのではないでしょうか。
 その芽の正体は「好奇心の木」でした。
 それは、異常に早く大きくなる種類のようでした。

 料理は学生の時からプロでやっていましたが、あらゆるものに手を出します。
 煮物・焼き物・漬物・イタリア料理・韓国料理・カレー料理など挑戦して全部失敗しました。
 とにかく、本を読まないもんだから。
 悔しいから、成功するまで繰り返します。
 ここからが、私の悪い癖です。
 うまくいったら、遣り方を変えて挑戦します。
 また失敗します。
 とにかく同じことを繰り返す事に、異常に抵抗を感じる性格の様です。
 「懲りる」という機能が欠落している様で、永遠に失敗と成功を繰り返しています。
 私の人生は何も完成しません。
 「好奇心の木」に何か変な種が寄生している様です。
 その正体は良く解りません。

 これと同じ現象が次々に発生します。
・穴を掘っている人がいれば、一緒に掘ってみます。
 どうせやるなら、そいつより早く掘ってやる。
 同じ掘り方は繰り返さない。
 常に違う掘り方を試してみます。
 スコップもいろんな種類を使い分けて試します。
 なるほど、スコップを作った人はこういう事を考えていたのか。
 当然、失敗と成功の繰り返しです。

・現場にユンボ(掘削機)があれば必ず乗ってみます。
 乗った以上はうまく操れるまで挑戦し続けます。
 うまくなったら、いろんな事に挑戦してみます。
 調子に乗っていたら、隣の家を壊しました。「ゴメンナサイ」

・型枠も組みました。
 やる事は全部一緒です。今後は省略します。

・鉄筋も加工して組み立てました。
・大工工事も手伝いました。
・溶接や切断機を使いました。
・鋼材から加工して倉庫を建てました。
・クロスを張りました。
・ペンキを塗りました。
 くどくなって来ましたから、省略します。
 結果、建築工事は全て手を出しました。
 他の分野をちょっと並べます。
・手彫りで印鑑を彫ってプロに褒められました。
・洋裁をしました。
・セーターを手編みで編みました。
・レース用の車を自分で改造しました。
・エンジンの載せ替えもしました。
・一人で家を建てました。
・野菜作りを徹底的にやりました。
 新聞にも紹介されました。
・金魚やメダカを飼って繁殖させました。
・キャンプに徹底的にのめり込んだら、枯れてしまって野宿になりました。
・ナイフ作りに没頭しました。
・海に出たら二三時間帰ってきません。
・山に入ったら半日帰ってきません。
 「お前、あほか?」と言われそうなのでやめます。
 これだけやってなにも完成していません。
 今は、ちょっと今までの事を冷静に考え直そうと思って、全部棚上げしました。
 しかし、「ぼちぼち絵を描いてみようかな。」なんて、悪い癖がチラホラ。
 教育が歯止めを掛けなかったら、こんな人間が育つのかもしれません。

 私は、生涯に読んだ本は、宿題の為にいやいや読まされた「坊ちゃん」だけです。
 本をいっぱい読んでいる人は怒るかもしれませんが、本を読んで得られる知識はいっぱいあると思います。
 本が人生の先輩であり、教師でもあると理解しています。
 本の中で我々に教えてくれる知識は、執筆者が経験の中から作り上げた事でしょうが、読んで得た我々の知識は未体験のものでその過程までは分かりません。
 言い換えれば、方程式です。
 方程式を丸暗記した状態では、それを分解する事は非常に困難です。
 積み上げた結果でないそれは、変化する事はありません。
 言い換えれば、方程式によって得た知識は、方程式を超える事は出来ません。 
 私は、本を読まなかったのか読めなかったのか分かりませんが、読んでいないことは事実です。
 その為に、自分の知識を確立する事に、一般の人達と比較して随分遠周りで不器用な人生を歩んで来たと自己解析しています。
 学生の時に数学の問題が方程式で解けず、その度に根底から方程式を導き出して、やっとみんなと並んで、「よーいドン!」。
 これが私の人生の様です。
 皆と一緒に走る為には随分早く走る必要があります。
 陸上選手の様な訓練を積んできたのが私の成長期であったのでしょう。
 コンピュータは本を読んでもさっぱり理解できず、親切に教えてくれる先輩もいなかった為、とにかく触りまくってその現象を自分なりに解析して何とか使えるようになりました。
 その内に、ソフトを作るようになりました。
 私のやることはいつも同じです。
 本を買ってきて読めば、ちゃんとその手法が分かるのでしょうが、また人生遠回りです。

 何かの知識を得ようとしても、それを完全に分解し論理付けしない限り、私の脳は受け付けてくれません。
 しかし、論理分解された”要素”はその組み合わせによって1つの知識を作り直します。
 知識を自転車に例えてみましょう。
 自転車にはシティ車・クロスバイク・マウンテンバイク・ロードレーサー・ランドナー・折りたたみ自転車小径車・電動補助自転車幼児2人同乗自転車・旅行車・トライアスロンバイク・サイクロクロスバイク・タイムトライアル車・BMX車・女性仕様車・トレッキング車・トラックレーサー・固定スプロケット車・単速車・ミキスト車・輪行車・リカンベント三輪・リカンベント二人乗り・リカンベントタンデム・三人乗りタンデム・四人乗りタンデム・五人乗りタタンデム・まだまだ有りますが取りあえずこの当りで。
 これを一つ一つその仕様を全部覚えようとする事が知識の丸暗記ですが、私は、自転車を分解してハンドル・シャーシ・ギヤー・タイヤ・その他部品に分解し、その種類と何故そのような形や機能を持っているか覚えます。
 知識に戻すときはその目的にベストな組み合わせを考え組み立てます。
 知識を暗記して覚えた人には有りませんが、組み立て直した私の自転車は最初に情報を得たものと異なる事も考えられます。
 それは、間違いであるのか、反対にその方が正しい事も有るかもしれません。
 自転車の種類はいっぱい有りますが、その部品点数は共通する物があり、暗記による記憶量に対して分解整理した時の記憶量はかなり少なくなります。
 コンピュータにちょっと詳しい人なら分かるかもしれませんが、ビットマップに対して私のしている事はJPEG圧縮による記憶と言えるかもしれません。
 コンピュータと違う事はデータが完全に復元しない事です。

 どんな人と話をしても、何でこの人はこんな話をするんだろう。
 どういう考え方をすればそんな気持ちになれれるんだろうか。
 それが、自分の持っている”要素”を組み立てて同じ答えが出れば納得します。
 分解できないと、新しい”要素”を探します。
 そんな時、その人の話に反論してみます。
 そうすると相手の人は、分かって貰えなかったと考えて一生懸命説明してくれます。
 それが見つかった時に納得し、その”要素”を自分に蓄積します。

 ここでは、”要素”と言う単語を頻繁に使っていますが、この単語でいいのかよく分かりません。
 ここで使っている”要素”について、ここだけに通用する定義付けをしておきます。
 水素が2つと酸素が1つでH2O(水)です。
 酸素が2つと炭素が1つでCO2(二酸化炭素)です。
 ”要素”=H・O・Cを個々に示します。
 ”要素”の組み合わせによって、いろいろな現象や言葉や感情が形成されます。
 ”要素”は何かといったら、言葉ではないし自分の頭の中にはこんな事みたいな状態で分類もされず溜まっています。
 人間の脳は現代のコンピュータとは比較できないくらい高性能です。
 そんな状態でも、必要な時必要なものを瞬時に選別し集めて整理してくれます。
 益々分からなくなったらゴメンナサイ。

 人と人とが会話をする時に、自分が頭に描いたことを言葉に変えて会話し、それを聞いた人はその言葉を解読し頭の中にそのイメージを描きます。
 しかし、そのイメージは相手のイメージと一致しているいるとは限りません。
 「ですから、こう言ったじゃないですか。」とよく言いますが、それは勝手に自分の言いたいイメージが相手に伝わっていると判断しただけで、それが伝わっていないことはよくあります。
 「こういったはずだ」とよく言われますが、「確かにそう聞きましたが、私はこう判断しましたよ。」といった会話がよくありませんか。
 自分の伝えたかったイメージが話した言葉によって相手にどう伝わったかを確認することが大事です。
 そのためには、相手にリピートしてもらったり、もう一度言葉を変えて話したり、絵を描きながら会話したり、とにかく、自分の描いたイメージを相手に伝えることが会話をする目的ですから、それを確認することは大事なことです。



 私は、言葉だけでは情報が足りませんから、相手の表情やしぐさを見ながらコミュニケーションします。
 言葉はこう言っていても、明らかに表情は違うことを語っていることはよくあります。
 そんな時には、こちらから言葉を変えてリピートしてみます。
 そうすると、相手はニコッと笑って私の表現を誉めてくれるような表情をして、「その通りです。」と、返事してもらえます。
 「目は口ほどに物を言う。」と言うことわざがありますが、私もそれには同感です。
 会話することとコミュニケーションすることにはかなりの違いが有ります。
 たまに、日本語を話せない外人と話をすることがあります。
 そんな時、私の奥さんは英語が得意ですから、通訳をやってくれます。
 最初の二三十分は通訳で会話しますが、段々と相手の感情が分かってきます。
 そうすると、知らない内に通訳なしで勝手に話をしています。
 奥さんは、又かという顔をしていますが、言葉が通じ合うようになった訳ではありません。
 しかし、コミュニケーションすることには何の支障も有りません。
 言葉が通じなくても、相手の感情を感じ取れるようになったらコミュニケーションできます。
 「にゃー、ごろにゃー、うっ、うにゃ、にゃ」私の飼っている猫の「ちゃめ」も同じように「にゃー、ごろにゃー、うっ、うにゃ、にゃ」。
 横で見ている人が驚いたような笑顔で「やだー、猫と会話してる。」、いや、ほんとに会話しているんです。
 お互いに何を考えているのか分かっています。

 これは逆の話になりますが、話の中で相手に質問と悟られない話を交わしながら、相手の表情を見ています。
 話の内容をどんどん絞り込んでいきます。
 表情の示す「はい」と「いいえ」でその人の考えていることが鮮明に見えてきます。
 最後に言い当てると、「なんで、私の心が読めるんですか?」。
 いいや、私は心なんか読めません。
 あなたが全部しゃべってくれたのですよ。

 これは”要素”の持つ応用編です。
 小学校の時に算数の応用問題で表彰された私です。
 私の人生は全て応用問題です。
 今から紹介していく事は、こんな人間が考えたことである事を前もって理解して頂ければ、抵抗感も少ないと考えます。

 世の流れに逆らい続けた私の経歴は、まさに世の中の劣等性を絵に描いたものです。
 冒頭に、幼稚園の時に小学生の先輩が気に入らなくて一人で通ったことを紹介しました。
 この根は枯れずに生き残っていたようです。
 私が現場監督をしていた建築会社の経営者に、権限をひけらかされた態度を感じると即座にけんかをして辞めてしまいました。
 そんなことで、建築会社3社を転々としながら、1983年三井ホームに個人契約の形態をとったスーパーバイザーとして入社しました。
 2×4注文住宅及び建売住宅の工事管理に従事しました。
 その後、工事々務の統括管理として事務組織の改善に努め、三井ホームが独自開発した管理システムに限界を感じ、結果的に40歳をスタートとしてパソコンを初めて使用しました。
 自力による工事管理システムの開発に着手しました。
 その後、営業管理・設計管理・メンテナンス増改築管理とそれらを統合した支店経営に関する売上利益管理等に発展させました。
 また同期間中、専任検査員として検査業務及び現場管理者の育成を兼務しました。
 途中に、正社員になるよう誘われました。
 しかし、その頃には組織に属することが不器用な人間であることは悟っていましたから、有り難い話ではありましたがお断りしました。
 子供も成長し、子供の希望する人生にブレーキを掛けないために、甘えた環境を脱皮することを決心しました。
 1995年、三井ホームとの契約更新を取りやめ、パソコンソフト開発の受託を個人事業として開始しました。
 その中で、サンピアホームズと共同開発によって生産管理システムを完成しました。
 1997年、情報をネットワーク化し、住宅の計画から施工、または供給までをわかりやすく正確に伝達できるシステムを構築しました。
 それを運用することを目的とし、ビッグウエイを開業し現在に至っています。
 言葉は悪いかもしれませんが、いい言葉を知りません。
 普通の人に比べて大きすぎる人や小さすぎる人を眺めて面白がったのが「見世物小屋」です。
 私は見た目は普通だと思っていますが。
 中身は見世物なのかもしれません。
 長らくお待たせ致しました。
 「見世物小屋」の開幕です。

 何故、この様な住宅が存在しているのか。その正体を解き明かします。
 100年住宅に対応した構造と外部仕上げ
 高気密・高断熱による全館冷暖房システム
 住宅の資産価値を失わない為に、陳腐化しない伝統的なデザイン手法
 新建材を使用しない贅沢な内装デザイン
 将来におけるメンテナンスを考慮した設備計画と外壁の施工手順(窓枠・サッシが交換可能)

 施主と施工業者が一体となり、全ての原価を公開して造った住宅です。
 間仕切りは最小限に施工されています。
 入居後の間仕切り壁は施工されず、その必要性も感じられていません。
 人生のムリ・ムダ・ムラを排除し、豊かに生活されています。

建築概要
 地階床面積 64u 19.4坪(半地下)
 1階床面積 64u 19.4坪
 2階床面積 64u 19.4坪
 延床面積 128u 38.8坪(地下は算定外)

 断熱    発泡ウレタン全面施工
 床     構造用床合板15o+杉ムク板30o
 壁      プラスターボード12o
        ドライウォール仕上げ
        一部杉板腰壁
 天井    プラスターボード12o
        ドライウォール仕上げ
 設備    全館冷暖房空調システム
        キッチン・食卓・洗面・トイレ・ユニットバス
         照明器具
       オール電化

 構造躯体に影響なく、設備のやり替えが可能です。

 建築総工費    1,100万円(坪当り28万3千円 地下は算定外)

 屋外設備・外構工事・設計・各種申請費用・登記費用・カーテン家具等、入居までに必要な、全ての費用を含め1500万円で取得されました。
 この住宅は単に建築費を安く抑えることを目的に造ったものではありません。
 この住宅の持つ機能・性能は最高レベルであり、仕上げ材に関しても高レベルなものを使用しています。
 督永さんの家族が幸せな人生を過ごす為の手段として必要とされる機能を妥協無く選択し、既成概念的な住宅造りのムリ・ムダ・ムラを、完全に排除しています。
 必要としないものを取得することは、楽しく生きることを目的とした人生の中から、必要としなかった建築費を稼ぐために、楽しく生きる時間を割くことになります。
 これは、人生の大きなムダです。


12月某日督永さんを訪問しました
近所の人から洋館だと評価されます。
 督永さんも、悪い気はしない様です。
 カナダ領事館の牧野さんも、
 「以前長期滞在していたカナダと同じ雰囲気があり、ホッとします。
 日本にもこんな家があるんですね。」
督永さんのお出迎えです。
 画面中央が督永さんです。
 気持ちよく出迎えて頂きました。
木の質感を生かしたキッチン周り。
広々とした洗面・トイレ周り。
こんなに大勢で訪問しましたが、まだまだ空間にゆとりを感じます。
 大容量の地下収納庫の入口です。
 右奥に見えるのは子供たちの部屋です。
 当然のように間仕切りはありません。
地下の全貌です。


 オープンな環境に育った子どもたちは、とても明るくて素直でした。
 突然訪問した我々に、楽しい話をいっぱい聞かせてくれました。
 今は、サッカーに夢中で家族みんなで豊かな人生を満喫されています。
 見学者の一人が漏らした言葉、(奥さんのことを)
 「あの子、頭いいわ」
いきさつ
 ある日突然督永さんが私を尋ねて来られました。
 督永さん・・「こんにちは、久しぶりです。」
 私・・「あっ、久しぶり。」
 督永さん・・「実はお願いがあって来たんですけど。」
 私・・「何?」
 督永さん・・「家を建ててもらえませんか。」
 私・・「いいよ。それで、予算は幾ら?」
 督永さん・・「一千万円なんですけど、出来ますか?」
 私・・「出来るよ。」
 これで「督永邸新築工事」の決定です。
 早速、建築業者を決め積算開始しました。
 徹底的に集約されたプランには設計打ち合わせや仕様選択等の打ち合わせはありません。
 こちらが一方的に決定し積算しました。
 積算を基に見積書を作成し、最終の資金計画に至ります。
 ここに作成された見積書は、施主に提示する額と下請けに提示する額は同一のものです。
 経費に掛かる費用も明確に提示してありますから、一般の見積書と比較して裸で見る経費は高額に感じるかもしれません。
 施主と建築業者は一つのプロジェクトの一員として認識していますから、お互いの手の内をさらけ出して話を進めます。
 当然、値引き等の話はありません。

それは、ひとつの箱作りから始まった
 (故)成瀬大治氏が、滋賀県と福井県の県境を通る「さば街道」にある古民家を取得されました。
 それは、旧「さば街道」に位置し関所のような機能を果たしていたようです。
 萱葺きで囲炉裏がある当時の面影を残したままの立派なものです。


 我々は、何かあれば成瀬さんに召集されそこに集いました。
 大きな囲炉裏を皆で囲い、おいしいお酒と、我々庶民には縁遠い京都から取り寄せた高級食材を使った料理でもてなして貰いました。
 成瀬さんは株式会社一色建築設計事務所を設立し、数々の名建築を世に残されました。
 「わしは皆さんのおかげで此処までやってこれたんや。
 今から、その借りをかえさんならんのや。
 それが、今からのわしの人生や。」
 夜な夜な成瀬さんと同じように、世に名をはせた人たちがそこに集っていました。
 建築論議が酒の勢いを借りて日本経済論から日本改造論。
 「何じゃこいつら、化けもんか!」通うたびに大きな触発を受ける私でした。

皆さんご注目ください。「妖怪ショー」の始まりです。
 妖怪「ぬり壁」成瀬大治はゆったりと構えおおらかです。
 しかし何かあればその大きな力で他を威圧します。
 そこに、妖怪「火車(かしゃ)」戸谷英世が現われて火を吹きまくります。
 「ぬり壁は」それくらいでは動じません。
 妖怪「子泣き爺」高島太加夫が溜まりかねて泣きながらしがみつきます。
 その光景をにたにた笑って見ているのが、妖怪「猫娘」成瀬さんの奥さんです。
 「おれも鬼太郎になって参加したい。」と思いながらその光景を見ている私は、「ねずみ男」になり掛けているのかもしれません。
 戸谷英世氏はツーバイフォー工法を日本に持ち込んだ当事者で、建設省の異端児として暴れまくった人であると聴いています。
 現在は、NPO法人(住宅生産性研究会=HICPM)を設立し、NAHB(全米ホームビルダー協会)と親密な関係を持ちながら、日本の建築業界を正しい方向に導くことに全力を投入されています。
 高島太加夫氏は、月刊誌(ウッドミック)を発行する株式会社ウッドミックの設立者で今は現役を引退して編集顧問をしています。
 ジャーナリストとして生きてきた人生で蓄えた知識は相当なもので、たいていの話題には平気で噛み付いてきます。
 酔っ払ってしまった私の脳味噌の警備兵は”要素”を判別する作業をしないものですから、敵であろうが見方であろうが関係無しに侵入してきます。
 入ってきた以上全部味方にするしかありません。
 後始末が大変な事でした。
 どちらにしろ”要素”が増えていることは事実です。
 世の中のOB達は人間を超越して妖怪となり、日本を食いまくった事を反省するのは当たり前ですが、私は、やっと食べれるようになりかけてきた時に、恩返しをいっしょにやろうなんて、私はまだ恩を受けていません。
 私はまだ人間です。
 悶々とする私を、じりじり引き込んでいく妖怪達でした。

箱作りの発想
 そうこうしている内に、成瀬さんから1998年12月相談を持ちかけられました。
 空き地に増築したいから協力して欲しいという事で、即時快諾しました。
 私は、成瀬さんから届いた設計図から積算と制作指示書を作成しました。
 届けられた設計図はツーバイフォー工法の驚くほどシンプルなもので、真四角総二階、外周壁のみで構造を成り立たせています。
 屋根は切妻で、もうこれ以上そぐことのできない究極のものでした。
 これが何を意味している物なのか、それに気付いたのはずいぶん後のことでした。
 皆さんもこの時点ではわかる筈もありません。
 (分かった方にはゴメンナサイ。
 あなたを尊敬します。
 私はこの時点では分かっていませんでした。)分からない人は、此処をえぐらずに私と一緒に流してください。
 後で、「こうだったんだよ。」と分かってきますからそれまで待ってください。
 人間の範疇では理解できない、妖怪の論理をこの後どこかで展開してくれます。

箱の持つ要素
 成瀬さんは、HICPM(住宅生産性研究会)の理事でした。
 それが催すセミナーで、成瀬さんはいつも次の様な事を訴えていました。
 成瀬さんはどんなときにも一眼レフのかっこいいカメラを持ち歩いていました。
 そのカメラで撮った写真をスライドにして、セミナーの中で皆にいっぱい見せてくれました。
 ものすごい量の写真を持っていました。
 「借りを返すには相当なお金が掛かるんだ。」と、俗人の私は安っぽい視点でそれを解析していました。
 それは、すごくやさしいお父さんのセミナーでした。

矩形の持つ要素
建物面積  100u
壁の長さ   40m
建物面積  100u
壁の長さ   50m
 同じ建築面積で比較して、正方形に比べて長方形の方が、壁の長さにして10m増、その比率は25%増となり、同じ床面積の建物であっても形によって建築コストはかわります。
 建築のコストを考える中で、外壁に必要な要素は、構造壁であること、そのために基礎が必要、構造用合板・外壁仕上材・断熱材が施工され、最もコスト高となる部位です。
 もっと細かな話をすれば、棟と軒の長さ・樋の長さは倍になります。
 このことを考慮しながら、住みやすさとバランスをとって計画することが大事です。

形状の変化が持つ要素
@ 住宅を単純な矩形で計画した例。


外壁総延長 34m(100%)
建築面積  70u(100%)
角の数   4箇所(100%)
A 形の一部を欠いて計画した例。


外壁総延長 34m(100%)
建築面積  66u( 94%)
角の数   6箇所(150%)
 矩形の角をとって玄関ポーチをデザインする場合によく見られます。
 壁の長さは同一ですが、面積に対する割合はコストアップとなります。
 建物の角に対しては屋根形状の変化も加味し5割強のコストアップとなります。

B に、欠き取りを付加した例。

外壁総延長 38m(112%)
建築面積  65u( 93%)
角の数  10箇所(250%)
 更に、建物を窪ませたことによって、面積が減り、壁の長さが増え、角に至っては2.5倍強のコストアップとなります。
 このような平面計画を行った場合、建物内部の平面計画の自由度を失うことにもなります。
 構造が複雑になることによって、床構造も複雑になり、構造材および労務費がコストアップすることは当然です。
 更には、躯体形状が複雑になり、屋根形状や外部造作にもコストアップの要素が付加されます。

角の構造
 建物の角は、構造材と角役物を取り付けるため、資材と労務費が一般の壁面と比較してコストアップします。
 Bに示す内容の建築費を単純な矩形に置き換えれば、次のような広さが確保できます。
 角の減量を床の増量と相殺しても大差はありません。

外壁総延長 38m(112%)
建築面積  90u(129%)
角の数   4箇所(100%)
 同じ建築費でBとCが出来るなら、あなたはどちらを選びますか。

モジュールを生かした設計
 構造用合板の売価を次に示します。
 何故、907ミリが1220ミリに比較して高価であるのでしょうか。
 それは、生産ラインは1220ミリのみで、それを、907ミリにカットして商品としている為です。
 カットして端材を処分する為、高価な部材となります。



 407モジュールと455モジュールによって計画された構造を比較してみましょう。
 野地合板は形状の違いによって、455モジュールは、合板受けの施工が必要となるために、単純比較できません。
 比較は、壁・床合板によって行います。
 建築工事費が1500万円程度の一般的な建物で、構造材はその約1割です。
 その、構造材費を150万円として、その差は、構造材費の7.5%になります。
 結論としまして、合理性のある407モジュールによって構造計画をします。
 1220ミリを三等分したら406.66…となりますが、生産工場の機械はミリによる設定で作動します。
 それと、水分を含んだ合板の伸びを加味して、407モジュールとします。
 構造の平面計画は1221ミリ角の倍数によって計画します。
 合板をカットする手間を削減します。
 切りくずとなって捨てられるごみは、購入費とカット手間とごみ処理費を足したもので、現場の中で一番高価な資材です。
 更にそれは、建物に取り付けられることなくコストを上げます。
 以上述べた手法を持って、ムリ・ムダ・ムラの無い住宅を計画します。

箱作りの完成
 やがて、工場から資材が発送され構造体が建ち上がりました。屋根の仕上げは土を置きました。
 片側には海外から取り寄せた屋根緑化に適した植物、もう片方には付近にある雑草の中からめぼしいものを集めてきて敷き詰めました。
 この手法によって、夏場の日差しを屋根の植物が吸収し屋内の冷涼化に大きな効果をもたらしてくれます。
 外壁には、海外から取り寄せた木の板を張り真っ黒のペンキで仕上げました。
 これを見に行ったとき、成瀬さんは「おまえら知っとるか?みんなこの板を見たらツルツルになった方を表に張るんだ。
 わしもそう思っていたんだが、本当はガサガサを表に張るんだ。
 何でか知っとるか?・・そっちの方がペンキの付着がよくて塗布膜も厚くなるんだよ。」その説明に我々は大いに納得しました。



成瀬イズム
 更に、成瀬イズムが吹きまくります。
 玄関の扉は210材をギャングネイルでつなぎ合わせて作り、取っ手は海から持ってきた木の枝。

 玄関の庇もその辺の板と木の枝。
 モルタルで土間を打ったら子供を呼んできてお絵かき遊び。
 最後に直筆で「竹遊草堂」と命名。
 殺風景な箱が段々と温かみを増してきます。
 これも住宅のデザインなんだと、大いに感心しました。



 床や壁には杉材を張り、天井は構造材のまま。「これで十分やないか。
 住むには何の問題もないよ。
 おまえらどう思う?」と成瀬さん。
 カウンターを置き、手作りの家具を配置すれば趣のある住空間が出来上がります。
 洗面器を見て驚きました。
 それは、台所で使うステンレスの洗い桶。
 又、成瀬さんの一言「そんでええやろ。」・・そこまでやるか!しかし、トイレにはちゃんとウオッシュレット。
 ただケチっている訳ではないようです。



箱作りのプロジェクト
 この家の完成を期に、成瀬(活齔F建築設計事務所)・山足(ビッグウエイ)・佐藤(潟~ック)の三者に依って「箱作りの住宅」のプロジェクトを結成し、世に広めようと活動を開始しました。
 それは、ベースプランを示す「BP」に建築面積を表示し、「BP‐35」「BP‐40」「BP‐45」「BP‐50」の四プランを基本に、その住み方を模索しました。
 基本的に矩形による外周壁のみを構造とした、コア(箱)を計画する。
 住宅が目的とする最大の項目は空間です。壁でも屋根でもありません。
 それらは、手段です。
 その次に、採光を確保したり空間を外部と連結するための機能や住宅をデザインするための部品として、ドアやサッシがあります。
 壁は物を置いたり飾ったりするための重要な役割を持っています。
 意味も無くサッシを取り付けることはよくありません。
 住宅が建てられる大きさは、土地の条件や年齢層の条件や経済的な条件によってさまざまです。
 どのような条件にも適応できるコアを準備し、そこに展開できるライフスタイルを模索します。
 以下に示す手書きのプランは全て成瀬さんが作ったものです。
どんな状況下にあってもフレキシブルに対応する機能を持ったコアを形成しておけば、その時々に満足できる住環境を手に入れることができます。
 「なるほど。」なんて思う必要はありませんよ。成瀬さんを置いて他の二人は普通の人間ですから。
 上っ面な結果だけを聞いて「なるほど、それはすばらしい。」なんて、そんな事をやっていただけなんです。
 「おまえら、よく聞いておけよ。
 人はな、10歩先を歩いたら誰も付いて来ない。1歩先を歩けばみんなついてくる。」「このことはよく覚えとけよ。」なんてよく説教をしてくれました。
 「あんた、100歩先を歩いたらどうなるの。」

 でもよく見てください。次に描いてある絵はすごく楽しいですよ。どんなところにいても探せば幸せってあるもんだな。
 そんなことを教えてくれます。

 これを世にどうやって伝えていくか。この事をを知れば皆幸せになれる。
 これを法人にして世に普及しよう。
実業家のプロがこれを聞いたら「アホ!」でしょうが、ど素人が集まってこんなことを考えていました。

プロジェクトの急展開
 活動の延長線上に、名古屋国際木工機械展1999が現れました。
 早速にウッドミックを通じ名古屋国際木工機械展に出品することを提案し、話は順調に展開しようとしていました。
 それは、展示会場の一角に箱を作り展示しようとすることでした。ある日のこと、関係者が集まり協議をしました。
 ちょうど昼に差し掛かったため、熱田神宮横のうなぎ屋で食事をとることになりました。
 ここでの話の展開が「展示場でそんな箱を造っても、ゴミになるだけだ。」「どうせやるなら、もっとちゃんとしたものを造るべきだ。」とかで、後の「サスティナブルハウス’99」へと方向が急変しました。
 「ひつまぶしの変」です。
新しいプロジェクトの結成


 HICPM(戸谷英世)を顧問に迎え、基本設計を活齔F建築設計事務所(成瀬大治)、構造設計を名古屋建築事務所(崎元隆一)、積算及び施工計画をビッグウエイ(山足達規)、構造材・建材を潟Tンピアホームズ、施工を潟cーバイフォー・フリートが主軸となるプロジェクトが発足しました。
 その組織は、実行委員15団体、賛助会員52団体と壮大なものに発展しました。
 プロジェクトは「サスティナブルハウス’99実行委員会」と命名されました。
 今後展開する私の主張は、戸谷英世氏と成瀬大治氏から受けた大きな感性に依るものです。
サスティナブルハウスとは(HICPM著書から引用)
 サスティナブルハウス’99の4つの実現目標(アフォーダブル・フレキシブル・バリュアブル・ヘルシー)を実現するためにサスティナブルハウスは2段階の設計手段をとっています。
一、アフォーダブル(支払能力範囲)な住宅を実現するために、徹底的にムリ・ムダ・ムラを発生させない設計手法として、構造計画、材料計画、平面計画(骨格計画)を採用し、かつDIY、ボーナス空間を配慮します。
二、フレキシブルハウス(柔軟性がある住宅)の実現をアフォーダブルの原則を維持しながら実現するために、多様なライフスタイルへのフレキシブル(柔軟)な対応が可能なコアシステムを採用しました。
三、バリュアブル(資産価値のある)な住宅の実現のために、長い人類の住宅歴史の中で、過去から現代まで、人々に高い評価をされてきたトラディショナルデザイン(伝統的なデザイン)によって設計を纏めました。
四、ヘルシー(健康的)な住宅は、健康的な屋内気候の実現とそこでも生活する人が高齢化しても住宅内で活動しやすく、自立する生活を促すような仕組みが取り入れられた住宅です。

プロジェクトの足取り
 プロジェクトの計画は、潟Tンピアホームズが取得した建売用地に展開しました。
 サスティナブルハウス’99は、ツーバイフォー工法による開発を行いましたが、今後展開される手法や論理展開は構造の種類とは全く無関係のものです。
 ツーバイフォー工法や鉄骨造やパネル工法は大壁構造になり、仕上がり状況は同等のものになります。
 木造軸組み工法においては、構造材を化粧として現すことが出来、その価値観は建築主の選択の域になります。



 基本構造をツーバイフォー工法とし、その最大の利点を生かすために、1階60uの総二階を基本にデザイン上の台形出窓2箇所を付けました。基本的なデザインは住宅の資産価値を損なわない為に、過去から淘汰されず現在も尚評価され続けている手法(トラディショナルデザイン)を用いました。
 シンメトリーを基本としたデザインが完成し、それを構造計画し設計図が完成しました。
 次に、積算が行われ実行予算作りが始まった。設計と積算は一度に限らず、新しいアイデアが出るたびに繰り返されます。
 その都度、その手法を採用するかを検証しました。設計の手法は幾度となく変更及び検証が繰り返され、完成の域に達しようとしていました。
単一の躯体から家は自在にデザインできます


 戸谷さんに教えてもらったことです。
 「ジンジャーブレッド」、直訳すれば「生姜パン」、日本語にすれば「メロンパン」、意訳すれば「仮面住宅」です。
 ヨーロッパやアメリカの町並みにある横に長く連なった集合住宅です。
 パン生地にしょうがをミックスしたペーストを塗りつけて焼き上げたのが「メロンパン」です。
 パン生地のようなのっぺらぼうな四角形を連続した住宅に、正面だけを化粧して美しい町並みを作っているのがそれです。
 町で見かけるきれいな女性は、付けまつげを付けて口紅塗って・・<ウッ!危機感>この話は止めます。
 デザインの話をする時にこの話をよく持ち出します。
 構造躯体とデザインを分離して考えることが基本です。
 その事によってデザインは変化できます。
 それは、同一の構造躯体からから色々なデザインができることになります。
 300年以上経ったその町並みは、世代交代ごとに建て替えをしません。
 ある世代は一生を掛けてポーチ柱を立てます。
 ある世代はそれも一生掛けて彫刻をします。
 一生のうちにそれだけをやるのであれば、何100年も持つ立派なものを造っても大した負担になりません。
 それは、長い時間を掛けて積み上げてきた結果であって、それを今再現するには相当な建築費が必要となります。
 何代も掛けて創造したそのデザインはその資産価値を積み続けています。
 100年の内に三世代から四世代が交代します。
 最初は建築費も掛かりデザインに力を掛けられません。
 しかし、建築費を負担しない後の二世代か三世代がデザインに全力を投入すれば、すばらしい住宅が出来上がります。
 それは、時間を経過する事と比例して住宅の資産価値を高めます。

積算の手法
 ここで行われた積算の手法は、通常日本の建築業界で行われているuや坪といった数値に対する単価の積み上げによる手法は用いません。
その理由は、設計計画や施工計画の見直しに対してその成果を検証することが困難なことです。

その例を上げてみましょう
@ 基礎の土間打ちと駐車場や外構造工事の土間打ちを考えてみましょう。
 u単価の積算は土間の面積に比例して変化しますが、実際には大項目である基礎の土間打ちに対して同時進行すれば、基礎に対して小規模な外構部分の土間打ちに対する作業人員は加算されずに済まされます。
 搬入される砕石もトラック単位での購入になるためお互いのロスを軽減しあい、ともすれば基礎のロスの範疇に収まることも考えられます。
 コンクリートは量に応じて軽減しますが非常に安価な建材です。
 建設機械の経費もほとんど加算されません。
 つまり、施工計画の組み方次第で外構の土間打ち工事が非常に軽微な予算で実行できます。

A 単価による大工手間を考えてみましょう。
 真四角な構造計画をされた設計とその角を欠いた設計を比較します。
 u単価の積算では前者に対して後者の予算は少なくなります。
 しかし、実際には後者は構造が複雑になり作業の難易度が増します。
 吹き抜けが計画されようものなら大工はひどい目に合います。
 凸凹だらけの躯体に吹き抜けまで計画した住宅は、工場での生産効率や現場での施工難易度が最悪なものですが、単価見積はそれを反映しませんから、建築主はずいぶん得します。
 一方単純な矩形に切妻の屋根を掛け吹き抜けも無い計画をした住宅は、工場での生産効率や現場での施工難易度が最良なものなのに、建築費は安くなりません。

 単価によって構成される積算手法は、作業難易度の平均値を取った要素が強く、設計や施工計画による努力を正確に反映することは非常に困難です。
 単価を用いた積算手法は概算であるといっても過言ではありません。

u・坪単価を用いない積算手法を示します。
一、各々の工程に従事する人件費。
二、作業に使用される建設機械の損料と搬入搬出費。
三、処分費等。
四、各種届け入れ・申請費用。
五、現場に搬入される資材の形状や購入ロットを単位とした資材価格と搬入に必要な運賃。
 積算の”要素”を5分類し、それぞれの経費を算出し、それを、統合して積算します。

設計積算
 我々はこの時点で「設計積算」という言葉を頻繁に使用するようになりました。
 建築費を把握しないで設計計画は成り立ちません。
 設計と積算は連動して行うことが当然であると決定付けました。
 更に、我々の積算手法によって出来上がったデータは改ざんされることなく工事関係業者の末端まで使用する事が出来ます。
 大手住宅メーカーの一部を除く、一般の建築業界では、積算を連動しない設計を行っています。
 その場合、設計図が建築業者に渡され見積りを作成します。
 現在行われている多くの手法は、建築業者の下請け会社に設計図を配布します。
 下請け会社は夫々が分担する見積りを作成し、建築業者に届けます。
 それを受け取った建築業者は、単価を客出し単価に置き換えて統合し、見積書を完成します。
 予算が合わなかった場合、設計が変更され、又、同じ作業が繰り返されます。
 下請け会社は、工事及び資材関係業者を含め15社以上になります。
 単純に計算して、設計図の受け取りに半日、見積りの作成に半日から1日、見積りの提出に半日。
 少なく見て合計一日半、人件費に掛かる経費は9万円。
 それが、15社で135万円。
 設計変更があればその倍の270万円。
 相見積りといって、数社の建築業者に見積りを依頼すれば、その倍数の経費が掛かります。
 その時、契約の取れなかった建築業者はその経費を自己負担することになります。
 それを泣き寝入りしたのでは経営が成り立たちません。
 その経費は、成約に至った顧客に全て負担させることになります。
 建築業者を競わして安い方を選択しようとする行為は、それに掛かる経費の拡大を自己負担することになります。
 私が、現場監督を始めた1970年代には、全ての積算を現場監督がやっていました。
 資材の発注も自分が積算した資料を持って行いました。
 それが次第に、サービスとして設計図から見積りを作ってくれる下請け会社が現われました。
 それが段々とあたり前になり、現在に定着したと記憶しています。
 積算作業が頻繁に行われる中で、その手法が、より簡易に積算できるuや坪単価へと移行していきました。
 その単価は、作業の難易度や加工工程の効率を平均化する要素をもっています。
 言い換えれば、概算による見積りと発注です。
 私が現場監督として、公団・公社の建売物件数十棟を管理していたころ、その実行予算を1時間ほどで作成していました。
 何故そのようなことができたのでしょうか。
 それは、所詮概算による見積りであることを、下請け会社と協議し、その単位を1棟にし納得しあったからです。
 しかし、施工に至りそれに必要な資材はuや坪単位では発注できません。
 u幾らで請け負ったペンキ塗りは、4リットル缶で足りるか、一斗缶で何本いるか、刷毛はいるか、養生テープやシートはいるかと言ったように、購入ロットを考えて発注します。
 結局概算では済まされません。
 uや坪単位で行われた積算の数値は特に資材の発注には無意味なものです。
 そうであるなら、二通りかともすれば三通りになる積算を、一通りにすることが最もムリ・ムダ・ムラを省く、選択すべき手段です。
それを設計時に行うことによって、より大きな経費を節減できます。

設計のポイント
 アフォーダブル・フレキシブル・バリュアブル・ヘルシーの4大ポイントを実現させるために、設計計画が始まりました。
★構造は単純な矩形とする。
 構造材の工場加工において、部品点数を最小限に留め作業効率を上げます。
 現場組立て工事において、部品選別作業と組立作業に掛かる時間を軽減します。
 これは、後の工事発注の時、フレーマーに対して「10人工で発注しますよ。」と言ったところ、「それは無理ですよ。
 最低15人工は掛かるよ。」と経験値で反論された。
 結果、あいだを取って12人工で発注しました。
 フレーミング工事が終わった後で、「あれどうだった?」と聞いてみると、「又、あの工事があったら、全部俺がやるからな。
 頼むよ。」と、「馬鹿野郎、2人工儲けやがった。」

★住み方の変化に対応させる為、間取り計画はしません。


 家族構成の変化や使用目的に柔軟に対応し、常にフル活用できる空間を確保します。
 成瀬さんが、スケルトンの構造空間の中に、いろんな住み方が出来る事を、絵にして説明しました。
 「この大きさで十分だ。
 どんな住み方だってできるよ。
 事務所やお店だってできまっせ。」
 どんな住環境にでも対応できる為、転売時のリスクを軽減し、資産価値を保続(サステイン)させます。
★窓の形状は一種類とし、それを配置してデザインします。
 「窓は一種類で十分デザインできます。
 これでええんや。」と成瀬さん。
 皆も納得。
 そしてその効果は、 資材業者のストックの経費を軽減します。
 現場での選別作業の手間を軽減します。
 単一作業による馴れの効果を期待できます。

★階段は中央に位置し、上下階を連結する機能に設備計画を添加します。
 動線に必要な空間を最小限に留めます。
 配管と配線の経路を単純化し、部品点数を減らし作業効率を上げます。

★設備計画は一箇所に集約し、住空間のレイアウトの自由度を確保します。
 更にこれを進化させ、設備系統を集約したシャフトを計画し「設備タワー」と命名しました。
 これに開閉機能を持たせ、どこにも影響を与えず設備の更新ができるようにしました。
 間取りが常に変化する要素をもっている為、天井照明は採用せず壁からの間接照明にします。

★階段は中央に位置し、上下階を連結する機能に設備計画を添加します。
 動線に必要な空間を最小限に留めます。
 配管と配線の経路を単純化し、部品点数を減らし作業効率を上げます。

★窓の形状は一種類とし、それを配置してデザインします。
 「窓は一種類で十分デザインできます。
 これでええんや。」と成瀬さん。
 皆も納得。
 そしてその効果は、 資材業者のストックの経費を軽減します。
 現場での選別作業の手間を軽減します。
 単一作業による馴れの効果を期待できます。

★階段は中央に位置し、上下階を連結する機能に設備計画を添加します。
 動線に必要な空間を最小限に留めます。
 配管と配線の経路を単純化し、部品点数を減らし作業効率を上げます。

★設備計画は一箇所に集約し、住空間のレイアウトの自由度を確保します。
 更にこれを進化させ、設備系統を集約したシャフトを計画し「設備タワー」と命名しました。
 これに開閉機能を持たせ、どこにも影響を与えず設備の更新ができるようにしました。
 間取りが常に変化する要素をもっている為、天井照明は採用せず壁からの間接照明にします。

★収納スペースを確保する為、高基礎による半地下構造とします。
 実行委員会でこの事が提案され、予算の大幅な増大が懸念されました。
 これを受け積算側から数万円の予算で済むであろう回答をしました。
 一同「そんな馬鹿な。」 なぜならば、外周壁の総延長32m幅120ミリのコンクリートは2.3m3、単価一万円としても2万3千円。
 鉄筋は知れたもの。
 型枠は損料計算で6千円、人件費は変化ありません。
 合計して4万円もあれば十分足ります。
 「なんじゃそりゃ」「こんなもんですよ」なんてことで、この案は即時採用されました。
 単価に依る積算なら、10万円を大きく超える額が加算される計算になります。

★小屋裏までを一体に発泡系断熱材で施工し、同時に気密を確保します。
 高気密・高断熱を基本性能とします。

★上下階の音に対する対策。
 構造用合板15oにSPFフローリング30oによって床を構成し、その剛性によって対処します。

★内壁・天井はテーパーボードにドライウォール仕上げとします。
 欧米で行われているごく一般的な工法で、後のメンテナンスが安価で容易にできます。

★外壁は、通気工法を採用しサイディングで仕上げます。
 「雨は上から下に向けて降る。ともすれば、下から上に降ることもある。
 」これは、建築の常識で、下屋の雨押さえ部分のルーフィングを立ち上げて施工したり、板金の立ち上がりに雨返しを加工します。


 これで済むと思ったら大間違いです。流れる水はそれで処理できますが、流れ残った水は、天気が良くなると蒸発して更に上まで登ります。
 逃げ場をなくした蒸気は結露して構造躯体にしみ込みます。
 これは、雨だけでなく、壁内結露によっても同じ現象が起きます。
 私は、某ハウスメーカーに勤務した折、専任検査員として全国のクレーム事例を閲覧してきました。
 開口部周りは構造用合板が変色し、北側の壁面にいたっては変色どころか、腐食によって崩壊しています。
 近代の日本住宅は、法律上呼吸できない壁面素材を使用するしかないのが現状です。
 そうであるなら、壁内通気によって構造体の乾燥状態を維持することは不可欠です。

 生活防水の腕時計で経験したことはありませんか。
 何かの都合で水分が入り、天気の条件でガラスの中に水滴が付き、何時までもその現象は無くなりません。
 終りには、壊れてしまうのではないかと心配になります。
 同じ事が家の中で起きていたらどう思いますか。
 100年持つ構造は、構造材がその材質を100年間維持出来ることが絶対条件で、この状況を無視しては安心した住宅提供はできません。

★後に、レンガを積むことも想定し基礎の底板を確保しておきます。
 建築工事の竣工時を完成としない家造り。
 生活しながら、ゆとりが出来たらDIYによって家の資産価値を上げます。
 家の外壁材を考えた時、家の資産価値を保続する、又は、資産価値を上げる為には、経年変化によって価値を増す建材を使用したい。
 その最も有力な候補はレンガでありました。
 しかし、レンガは非常に高価なもので、若い夫婦が初期の住宅計画に採用することは非常に困難です。
 その為に、将来にその可能性を残すことにしました。

★外壁工事終了後にサッシを取り付けます。
 最初は安いPVC(樹脂製)サッシでも、ゆとりが出来たら趣のある木製サッシに取り換えましょう。
 これも資産価値を上げる手法です。

★サッシ取り付けの次にトリムを取り付けます。
 木製で作ったトリム(装飾モール)は、痛めば簡単に取り換えできます。
 ゆとりが出来たら、もっと豪華なものに取り換えましょう。
 これも資産価値を保続(サステイン)したり資産価値を上げる手法です。

★サッシとトリム(装飾モール)はコーキング等による防水をしません。
 交換を想定した当然の手法です。
 壁の防水処理は、窓枠の中まで処理し、サッシをくぐった雨水は外部に流れ出るよう施工します。
 トリム(装飾モール)をくぐった雨水は、通気層の中を流れます。
 通気層に残った水分は自然に乾燥します。
 ペンキやコーキングによって被膜を形成すると、経年変化によってそれに水が浸透した場合、木の乾燥が妨げられ腐りの原因となります。

★外部をデザインする庇やデッキは取り外し可能な施工をします。
 構造躯体は真四角総2階ののっぺらぼうの箱です。
 それは100年間以上も変化しない基本構造です。
 玄関の庇やデッキ・パーゴラといった物は、家をデザインしたりアウトドアライフをするための部品です。
 それは、住人の思いによって変化出来るものでなければなりません。
 家は完成することなく、生活の手段として常に変化し続けます。
 それは、住環境に対応する事はもちろんですが、資産価値を保続(サステイン)させたり、更には、資産価値を上げていくことも大事な事です。

過去の失敗を繰り返さない
 昭和30年代後半から、100年持つ住宅として登場したものが、鉄筋コンクリート住宅です。
 誰もがそれを信じて疑いませんでした。
 しかし、その住宅の多くは20年を経過した時から解体が始まり、100年を待たずしてその殆どが取り壊されました。
 計算値では鉄筋コンクリートの躯体は十分に耐力を持っていたはずです。
何故このような結果になってしまったのでしょうか。

100年持つ住宅とは
 今からさかのぼって100年前は、明治43年です。
 そのころの庶民の生活は、井戸から水を汲み上げ、くどで煮炊きしました。
 玄関や勝手口から入った先は土間がありました。トイレは汲み取り式、風呂があっても薪で沸かします。
 照明はランプが主流。
 当然、ラジオもテレビもありませんでした。
 文明の進化は電気から始まり、家に電線が引き込まれると、当時殆どが構造の現しであった梁や桁に沿って碍子を取り付けそこに電線を一本ずつ這わせました。
 スイッチは照明器具にありスイッチ配線はありません。
 電化製品も無いからコンセントもいりません。
 水道が引き込まれると、くどの周りの土間を掘って鉛でできた水道管と陶器の下水管を埋め込みました。
 最初の40年はこんなものでした。
 こんな進化には経も無く付いてきます。
 この先は戦後です。
 進化の速度が増してきました。
 ラジオ・扇風機・電熱器といった電化製品が普及し始めました。
 プロパンガスが一般化してくると、土間の必要は無くなり、床を張ったキッチンのスタイルが始まります。
 プリント合板が普及し始めました。
 その建材の安さ故に、一般家庭の現しのままであった土壁を化粧し、土間には床板合板を張り、更には、間仕切壁を取り付け、ドアを設けることによって、部屋造りの認識が広まりました。
 電気製品の普及に伴い、壁にはコンセントや照明のスイッチが設けられました。
 それは、戦後の復興期である昭和50年代の歴史的転換期と言われた公団プランに突如出現した6帖のDKに端を発します。
 建売住宅が広く普及する中、家の評価はnLDKと言う表現によって、間取りの数や広さをもって判断されるようになりました。
 住宅の構造計画は、間取り計画を優先して行われる為、複雑なものとなりました。
 プレハブ住宅や大手ハウスメーカーが出現し、その個性をアピールする為に、さまざまなデザイン手法が競われました。
 それは、過去の手法を継承することではありませんでした。
 設計者個人のレベルで思いつかれたものが多数出現しました。
 ー外観デザインを和風や洋風で表現する。
 ー平面構造を複雑にし、屋根形状の変化を用いた手法。
 棟と谷の数を競い合った時代もありました。
 ー造り付けのバルコニーによって外観のデザインをする。
 ーある住宅メーカーが屋根にドーマを取り付けると、誰もがそれをなぞりました。
 ー片流れや丸い屋根、或いは陸屋根。
 外壁は凸凹、家の中には吹き抜けを造り、奇抜さを評価するデザインがもてはやされました。
 さまざまなデザイン手法が現われては消えていきます。
 流行遅れしたデザイン住宅は陳腐化して取り残されます。
 時間が経過する中で家族構成も変化し、住み難くなった住宅の増改築を計画します。
 間取りを優先して計画された構造は、容易に間取りの変更を受け付けません。
 無理やり計画すれば新築に匹敵する費用が発生します。
 しかし、陳腐化したデザインと住み難さを思えば残す価値がありません。
 結果、築後25年程の住宅を建て替える事になります。
 或いは、建て替えを諦め住み続けている家庭の中には、大邸宅の老人独居も多く見られます。

 建て替えに至った住宅も、又、間取りを優先した計画で行われています。
 我国の建設業界や住宅を取得するユーザーは、それしか選択肢を持っていないように見受けられます。

 この様に、住宅様式が大変動を起こしている事と平行して、戦前からあった日本住宅は台所が床を張った部屋になり、残った土間を居室にする程度の変化で、生活様式の変化に柔軟に対応しています。
 元々、間取りの発想を持たない構造は自由に住空間を変化させる事が出来る為、家族構成の変化には十分対応できます。
 気密性の劣る外部サッシは、アルミサッシに取り換えられました。
 構造上の劣化が著しい住宅は、構造の補修工事を行ったり、建て替えに至るものもありました。
 戦前に建築され戦災に遭わなかった住宅の多くは、現在も尚住み続けられています。
 その殆どは、木を表し更には木を化粧材としてデザインされています。
 その木材は経年変化によって黒光りしていたり、外部では風化した何ともいえない風合いをかもし出しています。
 そのデザイン様式は多くの賛同を得、文化財に指定されるものもあります。
 その中には、100年を経てその資産価値を保続(サステイン)しているものも少なくありません。

 100年持つ住宅とは何であるか。
 単に100年間崩壊しない構造を造ることは困難ではありません。
 しかし、建て替えられた住宅の多くは、使用目的に対応できなくなったり保存する価値を失ったものです。
 過去100年間にあった生活様式の変化に対して、今後考えられる進化はその数倍の速度であると考えられます。
 100年前に現代のコンピュータや携帯電話が考えられたでしょうか。
 その数倍以上の変化に対応できる事と、保存する価値を失わない事が、100年持つ住宅と言えるのではないでしょうか。
 それは、100年の進化を想定することではありません。
 どんな進化に対しても対応できる手法を探り、それを、実行することです。

進化の形 家造りは完成しない
 思いつきで色々な物を足し算します。
 その中で使い続けるものは一部です。
 使わなくなった物は引き算します。
 足し算と引き算を繰り返す中で残り続けるものが本当に必要なものです。
 それは、生活している間中永遠に繰り替えされる行為です。
 足し算するときは、後で引き算できるようにほどほどに。
 思いつきで色々な物を足し算し、その後、足し算も引き算も出来ないような家を造って、あとは後悔しながら住み続けるのですか。
 家の話では分かりにくいかもしれませんから、たとえをちょっと変えてみましょう。
 家を人にたとえて、最初に裸の人がいます。
 裸のままではみっともないから、下着だけでも着ます。(洗面・トイレ・浴室・照明) せめて普段着位は着てください。
 (キッチン・洗濯機・冷蔵庫・ダイニングテーブル・ベット・テレビ) もうちょっと、いいかっこうしたら。
 (玄関ポーチ・リビング・テレビ・ステレオ・・あなたも足してみてください)

 お出かけしますよ。
 ちゃんとした格好して。
 (プランター・パーゴラ・駐車場・花壇・植栽) 夏服に変えますよ。
 冬服に変えますよ。
 (ここから後はあなたが想像してください)
 最近帽子に凝っていて。
 サングラスも持っていますよ。
 指輪・ネックレス・バッグ。

 外出着を着て、指輪とネックレスとサングラスをかけて、帽子をかぶって、バッグを持って、そのまんま着替えもせず一生過ごすんですか。

 家は人間に例えれば裸の姿です。
 そこに、衣類や小物である機能やデザインを付加したり、変化させたりします。
 構造躯体の中に設備計画をする事や、構造躯体を用いてデザインする事は、人間の体の中に配線や配管をする事や、人間の頭に帽子を縫いつけるようなものです。

工事計画
 工事計画を行う手法として、データを工程、労務費、建設機械・工具、処分費等、申請等手続き、資材に分類します。
 そして、それぞれの原価を明確にすること。
 それを、CPMの手法にのっとり、最もムリ・ムダ・ムラのない工程管理をします。
 その結果、従来から行われてきた不透明な計画と比較し、格段に建築工事費が削減できます。
 これを、最も効率よく実行するために、コンピュータソフトを開発しました。
 このシステムはあらかじめ入力されている2×4住宅建築工事に関する設計積算データと、その内容をもとに、CPM(クリティカル・パス・メソット)の手法によって設定されたルールに従って作動します。

企業間ネットワーク
 更にこれを、猛烈に加速させる手法が企業間ネットワークです。
 コンピュータの持つ最大の武器はデータの伝達に歪を生じないことです。
 そのデータの伝達に掛かる経費は非常に軽微です。
 受け取ったデータから、必要な情報を抽出し最も使いやすいレイアウトで出力します。
 ネットワークのルート上で追加されたデータは、自社の経営管理は基よりネットワーク全てに配信され、企業間に必要とされる郵送や電話ファックスと言った情報伝達業務は皆無となります。
 たとえば、住宅を1軒建てる為に「工事名称」と「建築場所」は殆どの帳票に表記されます。
 それは、営業が施主と接触した時から始まり、設計を依頼し積算をします。
 この段階でも、社内報告帳票・業務依頼帳票など数十の帳票に記入されます。
 物件が成約し工事が着工に至った時、それは鼠算式に広がった施工関連組織に展開します。
 その数はまだ数えていませんが、千には納まらないし、万に至るのか、はたまたそれ以上あるのか全く想像できません。
 しかし、これをコンピュータを媒体にした企業間ネットワークを構築した時《1》になります。
 それは、「工事名称」と「建築場所」に限らず全ての情報に該当します。
 ネットワーク内の誰かが作成したデータは、二度とその作業(=経費)を重複しません。
 人間の果たす役割は、そのメリットを最大限に生かすために、お互いの役割分担とルールを明確に理解し合い、その責務を果たすことです。
 義務を果たすことによって、そこから生まれる利益を取得する権利を得ます。
 今後、売上や粗利益の拡大を期待することは困難な状況にある中で、これは、最も身近にある利益確保の手法で、各自の範疇で実現できます。
 予断ではありますが、これが仏教の示す大原則です。 
 (たとえ気に入らない人がいても、他人を変えることは困難です。
 そのような人が気にならない自分を作ることは、十分に可能性があります。)

アウトソーシング
 ネットワークが構築できたらそれに付いて来るのが「アウトソーシング」です。
 個々の持つ組織には営業・製造・事務処理といった多種の機能が必要です。
 その為の設備費や人件費が必要になります。
 しかしそれがフル稼働するだけの仕事量を確保することは困難です。
 業務を効率化して行うためには、その組織を維持するだけの業務量が必要です。
 組織を抱えて採算が取れないような業務は、個々の持った業務をネットワークによって束ね、それを、その量をもって効率よく処理できる組織にアウトソーシングします。
 そのことによって、ネットワークに属する全ての企業が、最も得意とする業務のみを分担して行うことができ、確実に利益をあげることが可能となります。

営業マンは釣り人
 営業として果たす役割は、住宅を建築しようとする施主との接点であり、プラン設計したり見積をすることではありません。
 営業マンを釣り人にたとえて考えてみましょう。ある日釣り人が磯で大きな鯛を釣りました。
 とても立派な鯛なので、活け造りにして食べたいと思いました。
 そんな時は、大急ぎで料理ができる料理人さんの所へ持っていき、料理をしてもらっておいしく食べることができます。
 ところが、料理に自信が無いのに、釣り人が自分で活け造りを作ろうとしました。
 いじりまわしているうちにだんだん鮮度が落ちて、とても刺身で食べることができなくなりました。
 仕方が無いので焼くか煮るかして食べることにします。
 しかし、それすらも料理できない釣り人は、立派な鯛を腐らして捨てることになってしまいます。
 たとえ話にあるような事は、日常営業する中にもあるのではないでしょうか。
 営業の果たす役割をよく理解した場合、営業として機能する人たちは自分の周りに、もっと一杯いることに気がつくはずです。
 その人たちが釣ってくる魚を料理してくれるスタッフがいることが大事です。



営業マンは何でも売れる
 生命保険の営業マンがやってきて、生命保険の話をしていました。
 「ところで、あなたは生命保険の営業しかしてないんですか?」と聞いてみたら、「はい。」と答えました。
 「住宅を売りませんか?」と聞いたら、「無理ですよ。」といいました。
 「なぜ無理なんですか?」と聞いたら、「だって、住宅の知識を何ももっていません。」と答えました。
 「なぜ、住宅の知識を持っていないと住宅が売れないんですか。
 いい家をちゃんと作ってくれる人達を知っていますから、一度その話を聞いて見ませんか?」と言ってみたら、と問い掛けたら「ああ、それならできますね。」
 自動車とは何ですか。
 タイヤがあってエンジンがついていてハンドルがあって走ることができ、ブレーキがあって止まれるものです。
 エアコンやステレオやカーナビがあっても自動車です。
 営業することは何ですか。
 エアコンやステレオやカーナビがついていなければだめなんですか。
 付いているほうがいいに決まってますけど、ついていなくても営業できませんか。
 人と合って会話ができ、自分の売りたい商品が自信の有るすばらしいもので、相手にとって他と比べてもメリットがある事を伝えることが、タイヤがあってエンジンがついていてハンドルあって走ることができ、ブレーキがあって止まれる事ではないでしょうか。
 すばらしい商品があることを伝え、それに興味を示してもらうことができ、更に詳しいことが知りたい時にはそれを処理してくれるスタッフがいれば、営業マンは何だって売れるし、誰だって営業マンになれるのではないでしょうか。



 営業にたとえれば、その機能に期待することは売ろうとする商品の説明ができる人と顧客との接点を作ることです。
 営業がその機能のみに特化すれば、同時期に多種多様の営業を行うことができます。
 その行為には特殊技能を身につける必要がありませんから、顧客となった人も瞬時に営業に転換することができます。
 そこに支払った費用も営業に転換することによって回収できます。
 営業のアウトソーシングにかかる経費は、単純な成功報酬です。
 支払う側も受け取る側もなんのリスクも発生しません。

昔の銭湯もネットワークのアウトソーシング
 建築費40万円+ユニットバス60万円+給湯設備30万円=130万円(設備費)
 130万円÷耐用年数25年÷12ヶ月=約4300円(月当り設備費)
 電気代かガス代1万円+水道代5000円=1万5千円(月当り光熱費)
 1万5千円+4300円=19300円÷20日=965円(お風呂1回の経費)
 家族が平均3人として 965円÷3人=約320円(一人当りお風呂1回の経費)
 町の人みんなが銭湯に来てくれれば、今の最低5倍、銭湯代500円にしても100円、150円払ったら十分です。

 東南アジアのある町では、食事の殆どは家族皆で外食していると聞きます。
 普通に考えればずいぶん贅沢に感じます。
 しかし、これもネットワークのアウトソーシングです。
 夫々の家庭に厨房設備やキッチンが要りません。
 食材は大量に仕入れますから個々に購入することに比べ、はるかに安いものです。
 此処では金額まで解析しませんが、銭湯と同様の結果が想像できます。

 ネットワークやアウトソーシングは、コンピュータ時代が作り出したものではなく、原住民の村の中で狩猟を専門に行う人がいるように、太古から存在していた手法です。
 何時の時代からその感性を失ってしまったのでしょうか。
 早くそれに気が付いて無くした宝物を探し出しませんか。

 宝探しのトレーニングをしましょう。
 ネットワークやアウトソーシングという宝物を見つけるには、それを見分ける感性が必要です。
 いろいろな事に置き換え考えてみましょう。

ネットワークを畑にたとえて見ます
畑とは
 個々が事業としている組織やそこに勤めている人が所属する組織です。
 或いは、個々の持つ能力です。
 能力には多くの種類があります。
 ・専門知識を持っている
 ・専門技術を持っている
 ・組織を持っている
 ・設備を持っている
 ・経済力を持っている
 ・企画力を持っている
 ・営業力を持ている
 ・情報処理ができる
 ・文章力を持っている
 ・料理が出来る
 ・野菜を作れる
 ・場を和ます力を持っている
 これらの能力を個々がハイレベルに併せ持つことは不可能です。
 これらの能力を利用し合える関係を作ることは可能です。
 利用し合える事は、個々が全ての能力を併せ持つ事に等しい結果になります。
 大きな畑にする事とは、お互いの利益を目的に利用し合えるルールをつくり、実行することです。

種とは
 個々が事業としている業務や、組織に勤めて行っている業務です。
 今後新しく起こしたい事業です。
 得意としない作物は、それを得意とする人の畑に植えてもらいましょう。
 自分は一番得意とする作物を効率よく作ります。

育てるとは
 芽が出たら、水をやり肥料を与え雑草を取ります。
 作物は植えっぱなしでは育ちません。
 放置しておけば雑草に駆逐されます。
 台風の害から守れるよう対処します。

 ネットワークによる作業分担を円滑に行うためには、情報を伝達するための手段を確立し、それをコントロールすることが大事です。
 契約行為やルール作りをしても、それをかいくぐることはよくあることです。
 更には、手法を真似して独り占めしようとする行為は当たり前の事としてあります。
 このような行為に侵害されないためには、ネットワークの徹底した効率化を常に模索し、そこで得られた利益は顧客にも十分還元し、このグループをブランド化していくことです。

収穫物とは
 個々が得意とする作物を効率よく育てます。
 個々で多種の作物を作ることと比較して、格段の差が生じます。
 いっぱい獲れた作物はお客さんにもあげましょう。
 残った作物を平等に分配します。

 全員が平等に利益を得ることが、ネットワークを維持するための大原則です。
 しかし、それを実現するためには、自分自身の作業コストはもとより、取引相手の作業コストを知ることが絶対条件です。

「IT」って何
  「IT」とはインフォメーション・テクノロジー(情報技術)なんて言ってますけど、コンピュータを使えばそれでいいんですか?
 インターネットをやればいいんですか?「情報」ってなんですか?
 ウインクすること・絵を描くこと・図を描くこと・話をすること・文章を書くこと・ワープロでデジタル化すること・数値データを使った表にすること・更にそれをデータベース化すること。
 これらはすべて情報化する方法であり、それをお互いに交換することが情報連絡・伝達・通達・交信です。
 このように、情報化する方法は多種多様ですが、発信者の意図した情報を、一切のゆがみを持たさず、どこまでも正確に、しかも、スムースに伝達する方法として、情報を数値化し、更に、デジタル化してコンピュータを媒体に、行うことが有効であると考えます。
 「IT革命」の意味することは、以上のようなことであると考えます。
 それを実現するためには、そうした情報をお互いが理解しコントロールできるよう、人間が今ある情報を整理しルール付けしなければいけません。
 「IT革命」とは、物事をコンピュータ化することではなく、コンピュータを活用できる土壌を人間が作ることだと考えます。
 そして、その土壌を大きくしたり、くっつけあったりしながら、企業→連合企業→日本→地球へと拡大することが、「IT革命」ではないでしょうか。
 でも、これがうまくいきますと、情報作業者=事務作業者=人間がどんどんいらなくなりますよ!
 人間にしかできなくて、しかも、大事な役割。
 それを探すことも、「IT革命」ではないでしょうか?
 人間が楽しく生活できるためにやるんでしょ!!

コンピュータソフトを活用したネットワーク
ネットワークのイメージ
 企業間ネットワークで作成されたデータが、ネットワークに点在する各部署のコンピュータソフトに流れていくイメージを図示しています。
 此処に示されているソフトは全て実存します。



 設計積算データを作成するソフトから、データが作成されます。
 此処から先に分散して行われる、生産・出荷・資材管理・経営管理に至るまでの全ての事務業務は、ソフトのボタンをワンプッシュすることのみによって行われます。
<建築業者>
 データは建築業者に流れ、見積書の発行から契約に至るまでの管理をします。
 契約に至った建築物件を着工から売上までをトータル管理します。
 それと連動した売上・利益管理をします。
<資材業者>
 建築業者から発注データと工程データと基本データを受け取ります。
 出荷指示から出荷に至るまでの運用伝票を発行します。
 出荷した記録を売上に計上し、代金回収管理をします。
 売上データをもとに、企業の利益管理をします。
<資材生産業者>
 建築業者から発注データと工程データと基本データを受け取ります。
 生産ラインに生産指示書を発行します。
 生産管理を行い出荷をコントロールします。
 出荷を持って売上計上し、代金の回収管理と利益管理をします。
<運搬・クレーン業者>
 資材生産業者から受け取ったデータをもとに、配車処理をします。
 出荷の完了持って売上計上し、代金の回収管理と利益管理をします。

 企業間ネットワークでは、夫々の業務の調整を電話FAX等の媒体を持って行いません。
 相手の進行状況や完了報告は、データが一方通行ではなく相互通行することによって全てが把握されます。
 夫々が知りたい情報は全てネットワークに共有されます。

 企業間のネットワークに対応するために、使用される用語は極力、財団法人 住宅金融普及協会「枠組壁工法住宅工事共通仕様書」に順じます。
 それは、建築工事に使用される全てのデータを設計積算時に作成することから始まります。

CPM Management System
 建設業者が行う建築物件毎の管理システムです。
 実行予算の作成から工程管理・品質管理・利益管理まで着工から竣工に至るまでの管理を全て行います。
 更に、結果データを元にして次の工事管理の計画の為に経験値である歩掛りデータを作成し、過去の経験値に上積みしその精度を上げ続けます。



 此処にはソフトが起動した時の最初の画面が示されています。
 建築の現場管理に従事している人には理解して頂けるかもしれません。
 住宅を建ててもらう人には苦痛としか思えない解説になります。
 私が申し上げてきた単価を用いない積算手法の答えです。

CPMデータベース構成
 CPMデータベースは工種分類(住宅建築工事において施工される作業内容を詳細に分類)に関連した、工程、労務費、建設機械・工具、処分費等、申請等手続き、資材によって構成します。
 全てのデータは数量のみならず時間データと連動しています。

<工事種目>
住宅建築工事を大分類
 ここでは工程を管理するための最小単位に分割します。


 CPMのルールによって計算された工程を、工事種目に従ってバーチャートに転換して表示します。
 上段に計画工程、下段に実績及び修正工程を表示します。
 工程管理を実施することは、基本的に計画通りに実施することです。
 計画工程と実績及び修正工程に差異が生じた場合は、必要に応じた手段を講じ計画工程に戻します。
 しかしその結果、変更に要する情報の伝達、製作・出荷・職方のローテーションの変更等、多方面において原価が発生することを認識しなくてはなりません。

<工事工程種目>
 住宅建築工事を工程によるまとまりを持つものに分割します。




 工事工程種目によって大まかなネットワーク工程を組みます。
 その中に工種分類のネットワーク工程を組みます。

 CPMを建築工事に応用するとき、施工期間を極限に短くすることだけが目的ではありません。
 本来、建築工事に関係する企業の目的は利益を上げることです。
 そのために、工程管理と利益管理が連動することは当然です。
  『4ヶ月かかっていた工期が3ヶ月になることによって、工事管理者がより多くの現場管理ができます。
 そのことによって、経費が削減でき利益が上がる』という理論をよく耳にします。
 しかし、現場管理に必要な経費は、検査や確認をする作業であり、工期によって左右されません。
 それどころか、無理をして工期を詰めたことによる原価流出の可能性は高くなります。

 その手法として次の点を考慮し、バランスをとることが大事です。
・現場に従事する職方を1日単位で拘束することが普通です。
 その為に、それぞれの作業工程が、中途半端な時間に終了しないよう、投入する人員数やその能力を考慮します。
 【例1】基礎工事の場合、コンクリートの打設があります。
 作業開始にそれを計画しますと、終了した後の時間は、コンクリートの養生期間に入ります。
 その為に、作業は継続できず無駄な時間が発生します。
 【例2】建方や造作工事のような、ある一定の日数を要する工事の場合、その規模とクルーの人数によって、その工事の総人工数が変わります。
・作業が無駄に重複し、作業者間の手待ちが発生しないようにします。
・工程の組み方によって原価が変わります。
 その為に、最も有効な工程を模索します。

工程表を守るためのポイント
 基本的に、一週間を単位にした工程管理をします。
 残された、作業の無い日は、天候によるくるいやミスを吸収するために空けておきます。



<工事発注分類>
 工種分類による施工内容を最小のグループに分類します。
 従って、工事発注を工事発注分類に従って容易に分類できます。



作業手順
 カレンダーで作業日を設定します。



 物件ごとに作業日の設定を行します。
 設定された作業日は工程管理に反映されます。

・基本的な休日を設定します。
・年号を更新します。
・カレンダー上に情報を表示し、休日を設定します。
業者と労務費単価を登録
 本来のCPMでは、職方の能力に応じた能力給によって運用されることが基本です。
 しかし、現状では、職方の登録及びその査定管理、又、それの運用が非常に高度な作業となるため、それぞれの発注先の登録と出力帳票に使用される略称に対し、1人工に当る基本労務費を設定し運用します。



業者を選択し登録メンテ・削除の選択及び新規登録を行います。


 業者の登録メンテ及び新規登録を行います。
 基本労務費は労務費の人工計算に使用されます。
施工数量・単位のデータ確認
 予め設計積算データには歩掛りあるいは、構成人員と日数が入力されています。
 その内容を確認し、これから計画しようとする工事計画の職方の能力をもとに、データを調整します。
 人工のシュミレーションをするには【工種分類別】に詳細に確認できる画面に切り替わります。
 調整日数は、工事計画時に天候によって考えられる休業日であったり、工事が遅延する要素が考えられる場合、予め設定しておきます。
 その事により、工事に遅れが生じたとき調整し、計画された工程に修正できます。
 このことによって、次工程への影響を食い止められます。



【工種分類別工程管理】を併用し工程データを完成
 工事工程種目毎に、必要とする作業日数及び作業人員をシュミレーションし、計画工程を組みます。







【工事工程種目別工程管理】を併用し工程データを完成
 工事工程種目毎に表示された工程を確認します。
 更に、下職の作業ローテーションを加味し調整します。
 工事計画は、ネットワーク工程管理によって計画します。
 しかし、実際の管理運用にはバーチャートを使用します。
 その理由は、結果のみを明確に表示し指示できることです。
 いかなるレベルの工事関係者にも理解できることが目的であるためです。



工事発注から工事発注先を決める
 簡便な操作によって、工種分類にルール付けられた工事発注業者を決めます。


建設機械・工具規格、機械・工具数量、機械・工具単位のデータ確認
 機械・工具単価を決めます。
 建設機械・工具発注先を決めます。


処分費等・処分費等数量・処分費等単位のデータ確認
 処分費等単価を決めます。
 処分費等発注先を決めます。


申請等手続き・申請等数量・申請等単位のデータ確認
 申請等単価を決めます。
 申請等発注先を決めます。


メーカー、品名、規格・品番、資材数量、資材単位のデータ確認
 資材単価を決めます。
 資材発注先を決める。
 工事において使用される資材は、施工する職方の能力によって不足することも考えられます。
 その場合によっては調整が必要なこともあります。


 ここで扱われる数量は、設計図書等から算出されたデータを基に、実際に購入するデータに変換します。
 たとえば栗石・砕石については、計算上2.5m3となった場合、資材数量は3m3となり4t車による購入単価を使用し、バラで購入できる資材、梱包単位でしか購入できない資材等も使い分けます。
 サイディング・内装壁材・床材・天井材などの一枚単位の施工面積が大きな建材は、割付によって使用される枚数が変わります。
 そのため、使いまわしを十分に考慮した割付図等によって施工指示をします。
 その枚数にロス材を追加して発注します。
 このような考慮がなされずに資材を搬入した場合、もし割付図等の施工指示が明確でなかったら、施工者の判断で使用されます。
 そのため、資材が不足し追加注文することになります。
 この場合には、当然端材である残材の量も増加します。
 又反面、もし割付図等の施工指示が明確でないために、ロス材を多く見過ぎて搬入し,残材となった場合には、余分に購入した金額とそれを搬出する金額、それを処分する金額が余分にかかることになります。
 では、それがもったいないからといって、ビルダーの倉庫に保管します。
 その場合、倉庫に搬送する費用・倉庫に保管する費用・保管された材料を管理する費用・再利用するために建築現場に搬入する費用がかかることになります。
 もっとひどいケースでは、結局使えなくなって更に費用をかけて処分することにもなります。
 いったん仮置きされた資材は、経理上どう扱うのでしょうか。
 いったん、建築現場からビルダーの共通原価の中に買い上げ、そこに掛かる倉庫費用と金利を加算しながら在庫管理されます。
 つぎに、再利用するときには、そこに計算された原価で買うことになります。
 移動するたびに運賃や労務費が加算さるので、その資材は通常購入する価格と比較して、非常に高価になります。
 それが明確に管理されないと、建築工事の原価管理が不明確なものになってしまいます。
 また、搬入時期については、運賃を節約するために、搬送車両を単位にした搬入が、一般的に多く見られます。
 そのことにより、工事現場に早く搬入された資材は、施工の邪魔になります。
 本来、施工すべきはずの職方が、それを移動します。
 更には、工事現場の作業環境が悪くなり、施工効率を下げることにもなります。
 そのためには、資材搬入は施工時期とうまくタイミングを計り、発注漏れがあったり搬入の遅れが無いように、リードタイムを十分に認識して管理します。
 搬入する資材は、作業の邪魔にならない位置であるとか、積み重ねであるとか方向など作業効率上げることを考慮し指示します。
 資材による、ムリ・ムダ・ムラは事前の作業や管理をしっかり行うことにより、簡単になくすことができます。

単価マスターの登録
 当該物件で使用した単価で、単価マスターを更新します。
 データが整理されましたら、登録ボタンによってマスターを更新します。


単価マスター




【工事予算計画】によって決められたデータの分析結果を確認する
 工事種目別に計画された予算を集計します。
 工事種目ごとの配分比率を確認します。
 集計されたデータを更に、躯体工事・外部仕上工事・設備工事・内部仕上工事に分類し、それぞれの合計金額及 び累計金額を計算します。
 それぞれの費用のバランスを確認します。
 更に、それぞれの合計金額及び累計金額を、u及び坪当りの単価によって計算します。
 そのことにより、工事管理者の経験値によって、大きなミスを防ぎます。
 設計積算時には、分析された結果を基に、住宅建設予算額と要望されるプランの優先順位等と比較し、工事費の バランスを調整します。


工事原価内訳書をつくる
 工事原価内訳書と工事原価一覧表をつくります。
 すべてのデータ一覧します。


発注内訳書を発行する
 業者への発注内容の確認と発注内訳書を発行します。
 工事計画されたデータを発注先毎、更に、労務費、機械・工具、処分費等、申請等、資材に分類して集計します。
 ここで計算される金額データには、発注先の経費に関する金額は反映しません。
 当該システムで扱われるデータは、あくまでも、建築工事に直接かかるコストのみを取り扱います。


受注内訳書
 発注先に対しての発注金額を確認したら、次に、その内訳を確認します。
 内訳書の内容は、施工範囲とそれに使用される機械工具の手配及び持ち込み範囲・発生する処分費の負担範囲・申請等手続きの作業範囲・使用される資材が、請負による自社手配であるか、それとも、建築業者から支給されるかなどを明確に示します。
 内訳書の内容は、金額にかかわる内容はもちろんのこと、発注される工事の内容に対する作業開始日及び作業完了日、機械・工具の使用される日、処分費等の発生日、申請等手続きの発生日、資材の搬入日等の工程情報は、契約される内容として非常に重要な要素であり、それを明確に表現します。
 次に、下請け業者に必要な経費を加算して発注します。


詳細な工程管理をする
 期間を限定して工種分類・建設機械・工具分類・処分費等・申請等手続き・資材搬入分類に関する詳細なデータを表示出力します。
 常に当日を起点として、おおむね1週間先の現場作業の開始・完了日、資材の搬入手配の確認を前もって行います。


工事日報による工程管理


 工事日報の果たす役割は、活動の記録・口頭で行われた指示を明確にしておく・仕様変更依頼のためと追加請求のための記録・問題解決と、調停や法廷で利用するために補完すべきものです。
 特にその中で、活動の記録は、工事が完了した後の分析であったり、今後行われる工事計画に役立てるための、重要なデータの役割を果たします。
 そのデータを役立てるためには、データとして残す内訳を組織の中で共通認識として整理します。
 そして、その内訳に沿ったかたちでデータを作ることが必要です。
 出力された内容を忠実に守って日々の工程管理を行います。
 工事日報には、当日行われる施工の範囲とその作業を行う人員数、それに使用される機械・工具、処分等の発生、申請手続き等の確認、資材の搬入予定とその数量等が、それぞれの発注区分を明確にして表示します。
 工事日報の記録は、口頭で行われた指示を明確にしておく・仕様変更依頼のためと追加請求のための記録・問題解決と、調停や法廷で利用するためなどの記録や、後で作業分析を行うときに判断するためのデータとして、気候・気温・風等のデータを記録します。
 特に訪問者は、次に施工に入る予定があったり、施工中である発注先の社長や工事管理者が、工事現場に訪れた時、その訪れた人とその理由を記録します。
 その理由によっては、工事管理の手法に何か問題があることになります。
 その場合は、今後そのような必要が生じないように改善します。
 活動の記録に該当することは予め予定として出力されているため、それを確認し変更が生じた内容について実施工程を訂正します。
 そのことによって、記録できるよう配慮します。
 工程が計画されたとおり円滑に行われるように、工事監督者によって管理される内容を指示します。
 工事監督者は指示された内容に連動するチェックリストをもとに検査を行い、それを記録として残します。

【工種分類別工程管理】に実績データを入力する
 工事日報によって報告されたデータをもとに、実施された内容にメンテナンスします。
 メンテナンスされた内容に従って工程や延べ作業時間が変化しますから、その内容に矛盾が無いか確認します。
 実施工程に遅れが生じたり、又、逆に早まった時には、調整日数によって計画された工程に戻します。
 計画された工程に、資材の搬入からすべてが関連して予定されているため、それに対して変更が生じた場合にはそのすべての予定を変更することになります。
 その変更を受けた業者は、更にそれを発注した業者へと、確実に伝達しなくてはいけません。
 それが、確実に伝達できないと、職方が工事現場に来なかったり、資材が搬入されなかったりして工程が遅れます。
 又更に、それを変更するといった悪循環が生じ、取り止めのないことになります。
 資材にしてみれば、そのことによる変更作業が発生するわけで、そこで発生した損失は、次にその建築業者から受注する時には、保険料として加算されるかもしれません。
 資材を適正な価格で安価に購入するためには、資材供給業者にムダな負担を掛けないことです。
 施工に関しては、施工業者の中で職方の作業をローテーション管理しています。
 もし、変更によって空きが生じ、それを埋めることができなかった場合、施工業者の負担になります。
 更に、他に受注した工事を変更できず、必要な数の職方を確保できなくなります。
 このようなことにならない為にも、計画された工程は死守します。

工事完了後計画と実績データを比較分析する
 工種分類ごとに施工数量・単位・歩掛り・人員・日数・数量・単位・単価・金額・開始日・完了日について、実績データと計画データの差異を確認します。

工種分類差異


建設機械・工具分類差異


処分費等差異


申請等手続き差異


資材搬入分類差異


工事種目別分析
 計画と実績を工事種目別と更に工事、建設機械・工具、申請等手続き、資材に分けて集計し比較します。


歩掛りマスター登録
 実績データから、施工数量のある項目に対して、歩掛りを計算し、その内容が適正かどうかを確認し累積されたデータを歩掛りマスターに登録し更新します。
 ここで作られた歩掛りマスターによって、新規の工事計画を作成する際にワンタッチで歩掛りマスターからデータベースに歩掛りを入力することができます。


 作成されるデータは、建築資材を供給する工場の加工ラインに直結するものであったり、部資材を購入するための発注ロットの形態を用いています。
 つまり、建築工事に関するデータは全て設計積算時に完成され、関連業者にデータ作成の負荷を与えません。
 それらを整理して、取引の交渉の場に提示しました。

CPM発注の約束
@ 設計段階から工事の施工性を考慮しています。
A 施工計画図や各々施工個所のディティールが完備されていることにより、建築現場で職方が納まりを思考する時間はありません。
 そのため、単位時間当りの施工量が増します。
B 極力限定された資材を常に使用することによって、職方の慣れによる単位時間当りの施工量が増します。
C 図面による見積依頼は皆無です。
D 材工により発注された資材についても、購入数量を明記することにより積算は不要です。
E CPMによる工程管理は次工程に対して、手戻りが発生しないよう考慮されています。
F 次工程に移行する節目においては、工事監理者が確認を行います。
G CPMによる工程管理は、工種が無理な重複をしないよう考慮されています。
H CPMによる工程管理は、資材の搬入時期を施工の妨げにならないよう考慮されています。
I CPMによる工程管理は、計画どおりの工程によって管理されることを大原則とします。
J 施工精度について、明確に規定します。
K 基本的には、数量と単価による取り決めであり、工事の一式発注ではありません。
L 下請け業者に対する経費は必ず確保します。

 実行予算が組み上がり、いよいよ工事着工になります。

工程管理
 CPMは戦争の作戦を練るために開発された手法です。
 それは、作戦に必要とされる工程を全てこなしながら、如何に早く完了させるかを組むもので、「限界工程管理」とも訳されます。
 建築工事に用いるCPMは、工期の短縮を目的としません。
 それは、CPMによって工程の流れを明確にし、次工程に引き継ぐポイントで、TQMの手法による確認検査を行い、円滑な工程管理を行う事を目的とします。
 ここで、CPMとTQM(トータルクオリティーマネジメント)を用いた手法を解説します。
 これまでを要約すると以下のように集約されます。
・住宅を建設するとき、住宅設計の段階で建設費がかさむようなプランを作成しません。
・それは財産としての価値を保続できるものです。
・設計段階では、後工程に対して、探る・悩む・問い合わせるといった無駄な作業をさせないために、曖昧な情報によってそれを作成しません。
・設計積算を行うことによって住宅建設費を把握します。
・建築業者は設計積算のデータをもとにして施工積算を作成します。
・CPMの手法によってムリ・ムダ・ムラのない工程管理をすることにより、建築コストを削減します。

 しかし、そのためにはまだ足りないものがあります。
 それは、どのような作業をいつ施工されるかはCPMの手法によってコントロールされますが、その施工するための品質についての基準が明確ではありません。
 たとえば、基礎工事が完了して建方工事を開始する。
 完成した基礎が、次工程に引き継いで問題がないか検査をします。
 そのとき、基礎天端がプラス方向に最大3ミリ、マイナス方向に最大4ミリの誤差があったとします。
 これに対し工事管理者は合格とするのか、或は不合格とした場合は、どの精度に手直しさせるのか、基礎天端の誤差に対しての許容範囲が明確でありません。
また、 塗装工事でペンキ塗りを行った場合、あるときには、いきなりペンキの刷毛を持って塗ってしまうこともあります。
 またあるときには、下地のペーパー掛けから初めて八工程も十工程もかけて仕上げることもあります。
 これらを、どれぐらいの許容誤差であったり、どのような作業工程で施工するかを前もって決めておくことが、検査をするときには必要です。
 施工精度や施工手順によって、それにかかる労務費が違うことがわかります。
 つまり、その施工基準が明確でない場合、積算をすることは不可能です。
 施主に対して見積を行うとき、或は契約をするときに、それらの基準が明確にされていなければなりません。
 ビルダーから下請けに対する発注の際にも、それと同様の施工基準を示すことが必要です。
 施工されるその精度は、決められた施工基準とそれに対する施工費用とが等価交換されるものであり、施工費用に相当しない精度を要求することはできません。
 この施工基準は、住宅建設工事を円滑に行うためには欠かせません。
 もし、施工基準を設けずに施工した場合、工事監理者の検査によって問題が発生し、工事施工者がそれをやり直します。
 また、施主によって指摘された場合には、工事管理者が工事施工者に,それをやり直してもらうことになります。
 しかし、そのやり直しの度合いによっては、取り壊しから始まり資材を新たに買い求め、再施工することにもなります。
 ここに費やされる建築コストはもとより、再施工することによってかかる時間は、後工程をくるわせます。
 よって、その後工程の建築コストにも影響を与えることになります。
 工事がCPMの計画にのっとって行われ、次工程に引き継がれ施工を開始する時、前工程の施工が完了していなかったとします。
 そのとき、工事監理者はその施工を一時中断し、前工程で施工されなかった工事を、前工程の職方或いは、次工程の職方に施工指示します。
 それを施工して次工程の施工を再開します。
 この場合にも、それに費やされる施工費はもとより、工程のくるいにより損失が発生します。
 このようなことがないように、住宅建設工事を円滑に管理する手法がTQMです。
 TQMの技術は、工事計画をもっとも効率的に実現する技術であり、住宅建設業者の利益を最大にするための技術です。
 CPMの説明の中にあった、工事監督者の行う検査であったり、確認であるものが、それを行うための作業です。
 そこで行われる内容は、それぞれの段階に応じたチェックリストによって明確にされていることが必要です。
 工事監督者は、チェックリストに指示された内容に従って、検査や確認を行います。
 TQM(トータルクオリティーマネジメント)とは、CM(コンストラクション・マネージメント=建設業経営)として行うべき業務そのものの、品質(クオ
リティー)を高めていく業務のことです。

CM(コンストラクションマネージメント=建設業経営)
 以下の図に示されるスパイラル状のものは、現状のムリ・ムダ・ムラを多く抱えて営まれている住宅建設業者のCM(コンストラクション・マネージメント=建設業経営)を象徴的に示した概念図です。
 線の長さはそれに要した労働時間であり、無駄に費やされた建築コストを示します。
 住宅建設業者はそのムリ・ムダ・ムラをいかに改善するかによって、直線の矢印が示すようにしていくか、その手段であったり方法について説明してきました。



CM(コンストラクションマネージメント=建設業経営)の全体像


 CM(コンストラクションマネージメント=建設業経営)は上の図に示されるように、プラン設計から始まり実施設計と設計積算を経て施工積算が行われます。
 それによって見積が施主に届られ受注に至ります。
 受注に至った施工積算を基にして工事計画が行われ、CPM(クリティカル パス メソッド)やTQM(トータルクオリティーマネジメント)によって施工管理されます。
 構造材供給業者は、施工積算のデータを基に生産管理によって、生産された構造材が建築現場に届けられ、資材供給業者は、施工積算データを基に資材管理されます。
 CPMによって管理された搬入日に合わせ、資材を供給します。
 そのような管理をされながら建築工事が竣工し,売り上げられ請求から回収に至ります。
 竣工した建築工事は、それに要した実績値の資材費とと労務費を加算することによって、実際原価を求めます。
 実際原価を分析することによって、そこにある問題点を見つけ改善します。
 それを持って、次のプロジェクトに対してより経済的で価値のある施工計画を見つけます。
 それを、住宅設計に生かしたり、より効果的な施工手法に改善することによって、予定原価を見直すことができます。
 それはひとつのプロジェクトを行うときに、そこで行われた作業の内容と、その作業に要した時間とその作業員をデータとして記録します。
 その他発注された労務費と、その根拠となる内訳をデータとして記録します。
 資材はその内訳と金額をデータとして記録します。

企業の成長
 プロジェクトのなかで取得されるデータは、その精度が高ければ高いほど、多ければ多いほど、それを使って分析される内容の精度をあげることができます。
 そしてその中から、より効果的な改善策を見つけることができます。
 収集されたデータはすべてが蓄積され、その蓄積量がある一定のレベルを超した時に、その中から得られる歩掛りであったり、住宅規模を基準においた、さまざまな係数が精度よく得られることになります。
 それらは、工事計画に生かすことのみならず、営業が施主に対して行う住宅建築費予算計画で有効に活用されます。
 こういったことを常に継続することが、下の図でイメージするように企業は大きく成長します。



企業間のネットワーク
 図に示されるそれぞれの立方体は、業務の量を表し、その業務が重複している現状を表します。
 これと比較し、共通の認識を持ったデータを、ネットワークの中で運用できる、共通のコンピュータソフトを使用した場合、最初に発信した人のデータは次に受診した人に受け継がれ、受診した人はそこに自己のデータを足します。
 更に、そのデータを発信するとその次に受診した人はそれに自己のデータを足し、又更に、発信します。
 発信されて受信されたデータはデータが足されながら次工程に発信されるだけでなく、発信者に対しても必要となるデータを足して
返信されることにもなります。
 ネットワークに属した人たちの業務は、すべてがラップすることなく共有されることになります。

共通の認識を持たないデータでそれぞれに行ったケース
 ラップした部分はそれぞれの企業に共通したデータを転記する作業を示します。


共通の認識を持ったデータをネットワークの中で運用したケース


新たに求められる職種
 ここに紹介した工程を実行するためには、積算から着工に至るまでの作業をこなすスーパーバイザーの存在が不可欠です。
 それは、現場監督が兼任できるようなレベルではありません。
 現在日本の一般的な建築業界では、高度なレベルでの積算と工事計画をこなすことのできる組織は皆無です。
 これをこなす経費も設計に匹敵します。
 しかし、発注の下部組織にまで拡散した作業を、一箇所に集約することによる効果は絶大なものです。
 設計が目的とする業務は、施主と建築設計士によって決められた住宅の計画を、住宅を施工する組織に対し、歪み無くスムースに情報伝達することです。
 その情報伝達の手法は、遠い過去には「絵図板」を用いました。
 それは、木の板に家の大きさや柱や構造の組み方を書き込み、皆がそれを共有の情報としました。
 細部の納まりについては、職人の技能として記憶の中に受け継がれてきました。



 複写技術が発明されることによって、現在有る設計図が誕生し、多くの職方に情報を配布することが出来るようになりました。
 それは、「絵図板」と比較して、より多くの情報を書き込むことが出来ます。
 それまで、棟梁が現場で指図していた細かな納まりも、容易に伝達することが可能になりました。
 これを機会に一般住宅の建築設計士が誕生したと考察します。
 建築設計士は、大工の棟梁の域を越えた住宅の計画やデザインに特化した存在になりました。



 設計図は、現場で施工をしたり、下小屋で加工をする職人にとっては非常に有効な情報伝達手段でした。



 しかし、住宅の加工技術が著しく進化する中で、木工機械を使った大量生産へ分化してきました。
 更にそれは、コンピュータを連動させた自動化ラインにまで至っています。
 それを稼動させるためには、設計図を基に、部材の加工リストを作ります。
 それを、コンピュータにデジタル化し、夫々の生産ラインに指示書を発行します。
 更に、生産時間の管理をし、分化した生産ラインから集合し出荷に至るまでを管理します。
 生産工場においては、設計図を使用した加工は無くなっています。



 複写による設計図が用いられてからずいぶん時間が経過しています。
 手作業による加工から生産ラインやコンピュータを使った方法に進化しました。
 又、あらゆる建築関連組織の情報伝達手法がデジタル化されてきました。
 過去には画期的であった設計図も、建設情報の伝達を目的とする手段として見直すべき時期です。
 生産機械とコンピュータを組み合わせた生産においては、数字情報だけで意図したものが生産されます。
 図として見せるのは、人間がそれを検査・確認するために付加されます。
 人間の為に、文字や図形情報を作成する事が必要であるなら、人間の持つ特性にやさしい表現を考えます。
 人は視覚的にものを見ます。
 その時点で、情報の重要度や形態を線の強弱や色調によって表現できる時代になっています。
 表現しきれないことのみ、数値や文字情報で補助します。



 時代が進化する中で人間の持つ構造は進化しません。
 今までの進化の過程を考えた時、その目的が企業の利益にあるように感じます。
 進化の中に押しつぶされ取り残され様としている人間の為に、現在ある技術を如何に生かし、人間にしか出来ない作業を補助し、人間の利益を目的とした構造に変えていく事が今後の課題であると考えます。

これからの木工業界
 近代における木工業界は、施主や建築設計士の多種多様のニーズに応えるべく、日々まい進してきました。
 戦後の木材の高騰期には、新建材が次々に開発され、一般庶民にとってはありがたい存在となりました。
 間取りを優先した複雑な構造計画や奇抜さを狙ったデザインなど、施主や建築設計士のわがままを、やさしく見守ってきました。
 それは、建築業界の母のような存在でした。
 しかし、育った子供たちは親の苦労も知らず、何を与えても気に入らず、小遣いはせびる、わがままの言い放題です。
 何故この様なことになったのでしょうか。
 建築業界の母として考え直す時期ではないでしょうか。
 私の職業の一端に、コンピュータソフトの開発があります。
 ソフトの開発時に必ず発生することがあります。
 開発を依頼された側から、 「こんなことは処理できますか」 「こんなことも可能性としてはありますが」と言った質問が飛び交います。
 その時の私の返答は、 「現開発段階でその処理は出来ません。」
 「指摘された処理が出来るように開発することは可能です。」
 「しかし現段階で、90パーセント以上の物件は処理できます。」
 「特殊なケースに対応する開発費は、現段階の数倍掛かります。」
 「ソフトの操作も複雑になり、場合によっては専門職が必要になります。」
 特殊なケースを重要視した結果、90パーセント以上の物件に必要とされない開発費や、情報処理の人件費が付加されます。
 90パーセント以上の物件から確実に利益を確保し、特殊なケースに関しては、従来通りの手法でこなすことが、最良の手段です。
 企業は利益を追求する組織です。
 無理やり受注を増やせば、利益率を低下させる事になります。
 90パーセントの受注に留め、利益率を上げた方が、遥かに企業の目的である利益を確保する事が出来ます。
 更に話を進めれば、それは主に軸組み建築の構造に関する事になります。
 特殊なケースを除いた場合、モジュールにはまった平面に四角い箱を造ることが構造計画になります。
 その場合、そこに使われる構造アイテムは精々数十種類しかありません。
 たとえ100を超えても大したことはありません。
 それを組み立てる行為によって構造計画をする事は可能です。
 それは、レゴブロックで家を作るような行為です。
 結果、構造計画の終了時に積算や工場の加工指示が完了することになり、それを、コンピュータソフトで処理することも必要としません。
 この手法で処理できる住宅物件は過半数を楽に越えると考察します。

そして、これがもたらす効果は
 生産部門の事務所で行われる情報処理に関する業務を皆無にします。
 必要最小限に整理したアイテムと、特殊なケースに対応するアイテムの価格に格差を設けます。
 それによって、より単純な構造計画を促します。
 その結果、生産部門では少数アイテムを計画生産できます。
 昔、長屋の引越しは畳と襖は、個人の所有物として持ち回りました。
 現状行われている殆どの構造計画は、壁芯を基本にしたモジュールによってなされています。
 工法による違いから数種類のパターンがあることは予測できますが、畳や襖に限らずその寸法を規格化し、その規格商品を使用する手法は十分に考えられます。
 私も現場監督時代には、単価を用いた積算を数多くこなして来ました。
 襖は殆どを造り付けの建具で構成していた時代はその中の一部でした。
 しかし、段々と枠付建具が普及するようになって、1軒の新築住宅に数枚しか使用されません。
 畳はずっとそうでした。
 その両方が共に1枚・1畳単価が数千円です。
 6畳一間しかなければ、襖は押入れの2枚か入り口を入れても3枚、畳は6畳、襖が2万円前後、畳は5万円前後です。
 共に、造作工事のころあいを見て開口や部屋の採寸をします。
 それを持って、工場で製品を加工作成します。
 出来上がった商品を現場に搬送し取り付けます。
 「こいつら、2万円や5万円でどうやって採算を取っているんだろう?
 マンションやアパートでしっかり儲けているからいいのかな。」と監督心に心配していました。
 畳屋さんに至っては、現場で測定器を使って採寸し、そのデータを携帯電話で送信すると、帰った時には畳が出来上がっています。
 それを積んで現場に戻り、取り付けます。
 こうなれば、利益確保は現場の距離の問題です。
 単価を用いた積算の手法は、取引単位の原価を反映しません。
 建築設計士や施主が幾ら努力していいものを安く作ろうと努力しても、その努力は報われず、誰かの付けを払わされる結果になります。
 先ほどの話に置き換えれば、付けを作っているのは1戸建住宅で、付けを払わされているのはマンションやアパートです。
 付けを払わされている側が、それに気付き付けを排除した取引を持ち込むようになります。
 しかし、付けを作った側は殆どその意識はありませんから、単価の見直しをするはずもありません。

桃太郎伝説
 皆さんが驚くような例を上げてみましょう。
 建築工事で設置される外部足場は、述べ床面積当りの単価が1300円前後です。
 延べ床面積126uであるなら、16万3800円になります。
 では、2LDK(98u)が10戸のアパートで考えてみましょう。
 延べ床面積は980uで127万4千円になります。
 頭の良い現場監督(”桃太郎”)はその金額を払いません。
 アパートの場合、壁が接した個所に足場は要りません。
 実際に掛かった足場の量を計算します。
 ・足場の掛かった壁の長さは1戸建の場合32mです。
  16万3800円÷32m=約5100円(外壁1m当りの単価)
 ・足場の掛かった壁の長さはアパートの場合63mです。
  63m×5100円=32万1300円
 ・u単価を掛け長さ単価に置き換えた結果が。
  127万4000円−32万1300円=95万2700円=”鬼”→”宝物” 桃太郎監督は鬼ヶ島に行って、鬼退治をし宝物をいっぱい持って帰りました。



 「めでたし、めでたし」ではありません。
 「桃太郎伝説」の原作では、桃太郎は正義の味方で、鬼は悪人では決してありません。
 この場合、足場仮設業者を”鬼”に例えれば、建築業者の傘下に位置する建築業界は”鬼ヶ島”です。
 ”鬼”達は意地悪な”桃太郎”に分からないように、単価で責めてくる”桃太郎”の目をくすねて、生きるための食料を備蓄してきました。
 ところが、”桃太郎”はそれを発見して取り上げてしまいました。
 こうなったら、”桃太郎”は正義の味方ではありません。
 ”鬼”も生きていく為にもっと大変な努力をしなければなりません。
 ちなみに、”お爺さんとお婆さん”は建築業者です。
 すみません。
 私も現場監督時代”桃太郎”でした。
 ”お爺さんとお婆さん”にはずいぶん誉められました。
 (桃太郎の引用については、逆説論に都合の良い題材と判断し、自論として使用しています。)
 だんだん、自分の事のように思われてきたでしょう。
 話を建築の世界に戻します。
 ここにあったu単価は、戸建住宅やアパートを均して出来上がったものです。
 ここで現場監督の取った行動は、足場仮設業者にとって都合の良い工事を都合の悪い工事に置き換えたことです。
 そんなことになったら、アパート工事は何とかなっても、戸建住宅では大損をしてしまいます。
 先に説明した現場監督の単価交渉を聞いて、「なるほど、さすが。」と感じた人は多いと思います。
 正義の味方を勘違いすることはよくあることです。
 ここに発生している矛盾点を解析しましょう。
 架け長さ単価を使用する場合外周壁の延長を計算することが必要になります。
 この場合、建物の高さには殆ど相違がありませんから、実際に施工する面積と殆ど誤差を生じません。
 戸建住宅とアパートを比較して単位面積当りの外周壁の長さを、例をもって計算します。
 戸建住宅・・32m(外周壁)÷126u(延べ床面積)=約0.253
 アパート・・63m(外周壁)÷980u(延べ床面積)=約0.064
 実際に施工される数量に対してこれだけのばらつきが有ります。
 これほどまでにはっきり分かる事例は少ないかもしれません。
 しかし、同じ現象は全ての業種や人生に発生しているはずです。
 では何故精度の劣る積算手法を選択しているのでしょうか。
 それは、積算作業の中で述べ床面積は設計図書に記載されています。
 それを転記するだけで済む、積算作業の簡略化がその理由です。
 コンピュータを使った積算によって計算作業が無くなりました。
 更に表計算上で延べ床面積を一度入力すれば、後は”=”を使用してあらゆる場所にリンクすることが出来ます。
 外周壁は積算作業が必要で、その情報がリンクすることは一般的には有りません。
 積算作業の簡略化を目的として、あらゆる工種をu単価に置き換えてきました。
 積算作業の簡略化を優先させた為に、その手法に発生する誤差は検証もされず無視されているのが現状です。

 ここで私が実際に行っている単価を用いない原価管理の手法を紹介します。





 使用される部材は仮設足場施工計画書に依って部品点数単位で積算します。

 リース料=部材仕入れ金額×金利×損料÷償却月数÷1日当りリース料×使用頻度係数×リース日数

 冒頭に紹介した得永邸の積算の一部です。
 ではここに使用している戸建住宅とアパートを単価を用いない積算手法で出る結果は幾らになるでしょうか。
 ここでは、リース期間を14日に設定してあります。
 実際に作成することは大変で無駄な作業になりますから、殆ど誤差の生じない係数でご勘弁ください。
 督永邸・・11万円÷31.75m(外周壁)=約3460円(m当り割戻し単価)
 戸建住宅・・32m(外周壁)×3460円=11万720円(16万3800円):68%
 アパート・・63m(外周壁)×3460円=21万7980円(32万1300円):68%
 何故このような誤差が出たのでしょうか。
 リース期間の違いも有りますがそれには理由があります。

売価の内訳


 売価は、仕入原価・労務費・各種消却損料・家賃等とそれに諸経費が加算されたもので成り立っています。
 ところで、諸経費とは何でしょう? **%なんてことでいいのでしょうか? 何%が正しいのでしょうか?
 仕入原価・労務費・倉庫・工場・機械・店舗までは原価です。
 建築業者の下請けから出される見積書の内訳の中で、諸経費にあたる部分と、見積り単価に隠されて付加された”要素”を、以下に列記します。
 重複する内容も有りますが、ここでもう一度整理して纏めます。
 ・設計図を受け取りに行く労務費及び旅費。
 ・不明確な情報を整理する労務費。
 受け取った図面から、探る・悩む・聞くといった作業によって、見積りに必要な情報を整理します。
 ・積算 ・見積りをする労務費。
 建築業者の要求するu・坪単価による見積書を作成します。
 ・見積りを提出する労務費及び旅費。
 ・施工図 ・製作指示を作成する労務費。
 建築業者の要求するu・坪単価による見積書と重複して、実際に施工・製作するために、必要な情報を整理します。
 ・資材を購入するための再積算にかかる労務費。
 u・坪単位では資材が購入できないため、購入ロットで再積算します。
 ・現場の偵察にかかる労務費及び旅費。
 工事管理者のレベルによって、適切な施工時期の指示に不安があります。
 その為、自己防衛の手段として、時々現場の状況を視察する事もあります。
 ・生産量が平準化できないことによる余分な生産体制にかかる経費。
 発注から出荷までのリードタイムが短く、出荷時期が集中することによって起こる、生産量の波を吸収する為に、工場はその波の最大値に近い生産体制を有します。
 その為に、生産量が減少したときの生産コストが高くなります。
 ・資材業者が倉庫に資材をストックする経費。
 急な発注や追加材の発生に対処する為に、頻繁に受注する資材をストックします。
 在庫するということは、新商品が出たときに、それが不良在庫になることです。
 それらを叩き売れば、新商品が売れなくなるため、多くの場合は、コストをかけて処分します。
 当然そこにかかるコストも、売価に含まれています。
 ・納期や施工時期の変更にかかる労務費や損害保険料。
 工程が変更されるたびに、職方ローテーションの組換えや資材搬入時期の変更連絡が必要となります。
 ・工事管理者の管理ミスによって受ける損害保険料。
 資材に搬入ミスによる手待ちや、突然の工程変更によって手持ちの職方のローテーションが組めない事もあり、その時には、『応援』と称して職方を外部発注し、余分なコストが発生します。
 ・曖昧な受発注によって受ける損害保険料。
 工事の受発注の内容が曖昧な為、工事管理者個々の判断によって施工精度が判断されます。
 検査によって過度の施工精度を要求されたり、場合によっては、遣り変え工事が発生します。
 ・会議に出席する労務費及び旅費。
 定例会議や打合せといった理由で、現場や会社に呼び出されます。
 呼び出す建築業者は1社ですが、呼び出される下請けは、多数の建築業者と付き合いがある為、場合によっては、その専任者を抱えることにもなります。
 ・工事管理にかかる労務費。
 工事管理者を必要とする場合の経費。
 ・事務処理にかかる労務費。
 受発注や支払い請求入金管理などの経理業務。
 ここに潜む”悪魔”の存在を明記していない事も、単価見積の持つ特性です。
 その割合は、単価構成の4割を超えます。
 つまり、単価の半分近くが説明のつかない要素で構成されている事になります。
 だから、誰が見積書を見ても訳が分からないのです。

 単価を用いた積算手法が、簡易な積算をする手法として発展してきました。
 しかし、便利として判断してきた手法が、建築業界に大変な害を及ぼしている事に気付いてください。
 これを脱却するには、原価を積み上げる手法、字が示すごとく純粋な積算手法に立ち戻ることです。

 今までの木工業界は、施主や建築設計士のニーズに如何に対応し、更に、その生産コストを如何に軽減するかに、四苦八苦してきました。
 今後は、そこに得られた経験や情報を基に、施主や建築設計士に対し、住宅の建築費にムリ・ムダ・ムラを発生させる要素を明確に提示し、そ
れを理解し協力していただく手段を確立します。
 今までに背を向けていた両者が、向き合って握手することによって、お互いが得する関係を築くことが出来るのではないでしょうか。
 建築業界の中で、受身一方に回っていた木工業界も、発想の方向を逆転する手法は十分考えられます。
 すでに始まりつつある世代交代の次期候補は、そのことを正論として受け入れる感性を持っています。

 食品業界では規格外の野菜を安価に提供することを始めました。
 消費者にとっては嬉しい事で、それは飛ぶように売れています。
 消費者は以前から分かっていました。
 切って食べるきゅうりが曲がっていようが、真っ直ぐであろうが味が一緒ならどうでも良かったのでした。
 それは、理由はあったにしても提供者が居なかっただけでした。

 私は、ある秋田の製材から加工までの組織をもった企業と仲良くさせて頂いています。
 ある時、「杉の間伐材を何とかしてください。」と相談されました。
 私は、「床板を作ってください。」
 ・・「生き節は有ってもかまいません。」
 ・・「厚さは30ミリにしてください。」
 ・・「u当り3000円を切らなければ話になりませんよ。」
 相手の出した回答は、u当り2750円でした。
 その単価であるが故に実現したのが、冒頭に紹介した督永邸です。
 普通なら暴露せずに自分の利益を考えるのでしょうが、こんな性格ですからその理由を紹介します。
 私の提示したu当り3000円を切る事は、純粋な原価の積み上げのみでしか出ません。
 発注は品名と数量を企業に伝達します。
 商品は簡易な梱包で第三者の運送業者によって届けられます。
 決済は現金のみです。
 基本的にノークレームが条件の取引です。(中間管理組織が要りません)
 品質による格差を付けず分類しません。
 お互いに可能な限り妥協し合い、双方の利益を尊重する事を大原則に話し合った結果です。
その中の一つの例は、乾燥効率を上げる為に私の関与する設計は、30ミリの杉板をベースにした造作材で計画されます。
 分類して値段の格差をつければ、夫々の商品の消費がバランスを崩し、それが生産者の負担になります。
 本当かどうか知りませんが、お菓子屋さんで売っている「割れせん」は、割れていないせんべいを、割って作っていると聞いたことがあります。
 曲がったキュウリだけ出荷しろと言われたら、お百姓さんはどうするんでしょうか。
 余計な心配ならゴメンナサイ。

手を見て考えること
 お客さんからクレームがあって、 「すぐに行きます。」なんて飛んでいったら、 別のお客さんからクレームがあって、 「申し訳無いけど行けません。」なんて言ったら怒られちゃって、もう大変!
 こんな時に、いきなり行動に移さずに手を見て考えて見ませんか。
 お客さんからクレームがあったら、すぐに飛んで行かなければいけないんですか?
 電話で状況が判断できたら、それに対処できる人が行った方がいいんじゃないですか?
 どうせ飛んでいっても、「今度いついつどうします。」なんてことで帰ってくるんでしょ。
 「だったら、行かなきゃよかったのに。」

 すぐに飛んでいってしまうのが「Aタイプ」。
 他にもっと良い方法が無いか考えるのが「Bタイプ」。
 ひとつの課題に対処する方法は幾つもありますよ。
 「Aタイプ」はとっさに思いついたことで、一番悪い方法を選択していることが多々あります。
 こんなことは、仕事や人生の中にたくさんあります。
 何かあったらすぐに行動に移さず、手を見て自分の発想が今どこにあるか、ちょっとだけ考え
てみませんか。



 戦後教育の中で我々日本人は【5+5=?】に代表するように、1つの答えを求める教育を受けてきました。
 そのせいか、成人して仕事をするようになったり、生活をしていく中にも、その癖が抜けていません。
 目的の為の手段を1つしか考えず、他の手段を探ろうともしません。
 今回は、住宅造りをもって話を展開してきましたが、それは人生全てに共通する事です。
 一つの答えを求める教育は、子供の自由な発想を閉じ込めてしまい、教育の持った固定概念を植えつけることになります。
 【?+?=10】のように、課題に対する手段が複数ある事を認識し、その中から、最良な手段を選択出来る感性を身につける事が大事です。

目的と手段
 「あなたは、大きくなったら何になりますか?」
 「私は、大人になったら警察官になって、みんなの為に一生懸命働きます。
 そして、結婚して子供を作り、自分の家を持ちます。」
 「はい、よく出来ました。」
 今の子供たちは、もっと夢の無い答えを返すようですが、これも、教育の中で行われてきた光景です。
 中学校に入ると算数が数学に変わります。
 そこで、先生が難しい数式を並べて説明します。
 最後に、このように難しい事は覚えなくてもいいですから、最後に出た答えだけを覚えてください。
 今後このような問題が出た時、それを当てはめれば問題が解けます。
 これが、方程式です。
 「警察官になって・・」も、そう答えれば「はい、よく出来ました。」、これも方程式です。
 方程式とは、「何故」を忘れることや考えないことです。
 「私は、大人になっても仕事はしたくありませんが、楽しく過ごしたいです。」なんて答えたら、「はい、よく出来ました。」とは言ってもらえません。
 しかし、その答えが間違いであるとは言えません。

 「何故、仕事をするんですか?」・・「仕事をしなければいけないんですか?」
 「何故、結婚して子供をつくるんですか?」・・「結婚をしなければいけないんですか?」
 「何故、家を建てるんですか?」・・「家を建てなければいけないんですか?」

 これからの人生の中で、何かをしよう・何かがしたいと考えた時、「何故、何故、・・」どこまでも自問自答してみてください。
 最後に答えが出ない場所まで行きます。
 その答えは「自分の幸せの為。」です。
 答えは一つしかありません。
 「家族の幸せの為。」は幸せである家族を見て自分が幸せを感じることです。
 ここで出た最後の答え「自分の幸せの為。」が《目的》です。
 途中で出た答えは全て《手段》です。



 人は動物でありそれが持った本能に大きく支配されています。
 幾ら理性を持ってそれを押えようとしても、生存する為の絶対条件を変えることは出来ません。
 理性側から考えれば利己主義的な答えのように考えられますが、それが、人間=動物の持つ本性であると考えます。

 住宅を取得することを目的と勘違いし、更には、固定概念によって必要としない機能や性能を求めた結果、ローン破産者が急増しています。
 その中で、最悪のケースとしての自殺者が多数に及んでいます。
 これは、住宅に関してのみ発生している現象なのでしょうか。
 「自分の幸せの為。」の《目的》を見失った現象は、あらゆる分野に存在します。
 それは、個々の人生や企業や政治組織全てに当てはまり、今の日本の現状ではないでしょうか。

どうする日本
 ・家系の代毎に家を建て替える。
 ・高速代が安いからと言ってガソリンを使いまくる。
 ・流行を追いかけ安くなった洋服を買いまくる。
 ・必要性に疑問を感じる道路や鉄道。
 ・外食や出来合いのものを買って食べる。
 ・省エネの補助金に踊らされてまだ使える物を買い換える。

 消費に依って金銭が循環すると、経済が活性化し景気がよくなります。
 しかし、消費された金銭は日本国内に留まるどころか、原材料や商品の製造を国外に依存している日本から脱水機のように放出されているのが現状です。
 為替レートが1ドル360円であった過去には、外貨の確保も容易であり、世界経済の為には必要なことでした。



 人間は習慣に左右され易く、それを変える事は苦手な生き物です。
 私も、禁煙に挑戦した経験があります。
 それは、ニコチン中毒の克服ではなく、タバコを吸う習慣の克服であることを悟りました。
 為替レートが変動性になり、更に、自由貿易が開始され保護を無くした日本が、世界の中で生きていく為には、禁煙の苦しみを味わう時期に来ているのではないでしょうか。



 コンピュータソフトの開発を生業とする私にとって、この様な事を論じることは、大きな矛盾であり、大変な危機感を感じます。
 私も皆さんに訴えてきた事を同時に自分に言い聞かせています。
 建築設計士や建設業界の皆さんには大変失礼なことをいっぱい申し上げました。
 その時代にはそれで正解であったのかもしれません。
 無駄な浪費が必要悪のような時代があってもおかしくない進化を遂げて今があります。
 太古からの日本文化の蓄積を無視するような異常なものでした。
 しかし、変化し続けたことは事実です。
 過去を否定することは無意味なことです。
 しかし今は、明らかにその当時とは状況が異なります。
 過去には、状況に対応して変化し続けてきたことを、何故、今になって変化しようとしないのでしょうか。

変化できない
 変化するから失敗もあり、進化もあります。
 ちょっと待ってください。
 変化できないのではないでしょうか。
 では、何故変化できないのでしょう。
 ちょうど私の年代が今の日本を支えています。
 人の成長に節目を付けて、その節ごとに振り返ってみましょう。
 人間の成長を10年毎に区切って考えます。

10代までは形成期
 何でもがむしゃらに吸収します。
 感性と理性が入れ替わる時期です。
 人間になる為の時間です。
 *生まれたばかりの人間は、言葉を知りません。
 犬や目子と同じように感性だけで状況を判断したり、コミュニケーションします。
 言葉を覚えると同時に言葉の持つ定義を覚え感性と交換していきます。
 私の子供がまだその初期の年代に、電話が掛かってきてタイミングが悪くちょっと放置していました。
 子供はそれが気になって「ママ、電話がミンミン鳴っているよ。」それを聞いた私は、「電話はリンリンだろう。待てよ、音を聞けば昔の電話ではあるまいしベルはついていません。
 その音はミンミンの方が正しいことに気付きました。」その時私は、固定概念で固まっている自分を発見しショックを受けました。
 当然その後も「リンリン」は教えませんでした。
 それどころか、小さな子供と会話する時にはそれを気に止めるようになりました。
 それから先は、子供はある意味私の教師になりました。
 あなたは、「電話がリンリン鳴っているよ。」と言っていませんか。
 人間になる事とは感性と理性(固定概念=方程式)を交換する事なのでしょうか。

20代は成長期
 やっと人間になりました。
 人生の1年生、いっぱい失敗を繰り返します。
 失敗することは、何かに挑戦した証です。
 考えている間は、失敗しません。
 考えている間は、成長しません。
 失敗を回避すれば、何も考えないし、何も挑戦しません。
 当然、成長しません。
 実験が完全に成功することはありません。
 実験で失敗を発見すると、次の課題を手に入れ進化します。
 失敗しなかった実験は、ある意味失敗です。
 実験が成功すれば「万歳」でしょうが、その進化もそこで終わりです。
 企業の会議の中で失敗を責める会議はよく見受けられます。
 失敗を誉める会議は経験ありません。
 ましてや、失敗を探す会議はあるのでしょうか。
 企業の経営者や管理者は、雑草のように野菜の新芽を抜き取っているかもしれません。
 雑草と勘違いする野菜の新芽も、大切に育てればやがて花を咲かし実を付けます。
 *「最近の子は失敗しなくなった。」と、もらす経営者の言葉を、私がこの年代の時何回も聞いた記憶があります。
 テストのための教育を受けてきた私の年代は分解できない方程式を持っていました。
 それが分解もできず組み立ててみることもできません。
 言い換えれば、新しいことに挑戦しません。
 それを悔やんだ経営者は明らかに我々の年代と違う教育を受けてきたのでしょう。
 此処で示した私の説明は「こうあるべき」ではなく、「こうすべき」に改めます。
 大変です。
 まずは固まってしまった固定概念=方程式をほぐす作業から始めなければいけません。
 急いで、失敗してくれる人間を作りましょう。

30代は熟成期
 今まで育ててくれた親(企業)に恩を返します。
 この時期の失敗は誉めてもらえません。
 気力も体力も充実してくるのがこの時期です。
 大人になる為の時期です。
 大人になる事とは何でしょうか。
 「三つ子の魂百までも。」と言われますが、感性によって反応する機能は三歳までに形成されます。
 親や育った環境のせいに出来るのはこの時期までです。
 そこで形成されなかった機能は、理性で補う必要があります。
 その為には、自分の本性を理解することが必要です。
 社会にバランスを取って参加できる事が大人の条件です。
 *今更ほぐして失敗してもらっては困ります。
 自己解析をしてもらいそれを理解した上でバランスを取った自己改正をしてもらいましょう。

40代は大人の成長期
 「四十にして惑わず。」「四十になったら自分の顔に責任を持て。」
 ことわざが示すように、この時期は自分個人に責任を持つ時期です。
 親のせいや環境のせいは通用しません。
 責任を持った大人としての人生が始まります。
 この時期に、言い訳は通用しません。
 当然、失敗は許されません。
 大人として人を育てる側に回ります。
 *固まってしまったこの時期には自己改正は難しいかもしれません。
 理性を持って強引に理解し、後世の教育にまい進しましょう。

50代は大人の熟成期
 完成した大人が飛躍的に伸びる時期です。
 自分でやりたい事が実現できる力を持っています。
 自分の歩んだ人生の答えが返ってきます。
 人生の最高期です。
 社会の為に貢献します。
 *変化できる世代を作り直すことを大きな課題として認識しましょう。

60代は人生の成長期
 我武者羅に生きた自分の人生を振り返り、反省を始めます。
 自分の過去を整理し、自分の人生を完成させます。
 人生に遣り足りなかった事を見つけ、補足します。
 この辺りから、変化できた世代がいるはずです。
 もう一度、現場に復帰して今の現役に協力してあげましょう。

70代は人生の熟成期
 人間として得た自分の財産を後世に伝えます。
 最後の力を振り絞ってがんばりましょう。
 *此処は戦前生まれです。
 現代教育は受けていません。
 自分の経験論を持ってその違いを解析し、皆に教えてください。

80代からは死ぬ準備
 人間として悟りを開く時期です。
 やり終わった自分の人生を、第三者的立場から眺めて見ましょう。
 心身を分離して己が姿を見てみましょう。
 これで良かったのか、ゆったりと時間を費やして自己満足に耽りましょう。
 自分の出した結論を後世に語り継ぎましょう。
 *元気のある人は死ぬ準備は後回しです。

 変化できた時代の人達が、その変化の中で、変化できない人間を作ってしまう教育に変化させたのでしょうか。
 時間が経過する中で、変化できる人達はいなくなり、変化できない人達に世代交代しました。
 そうなれば、もう変化しません。
 変化しない人間を作り続けて大変なことになってしまいます。
 国民全員でこの事を認識し、夫々の立場でできることを分担し合い、我々が生きる日本を依り良いものに変えていきましょう。

軌道修正したら再出発
 思いついた事があったら考えていても答えは出ません。
 すぐに行動に移すことです。
 そうすればすぐに答えが出ます。
 間違っていたらやり直せばいいだけです。
 短い人生、さっさと前に進みましょう。
 人間の力には大きな箱をいきなり置くような能力はありません。
 幾ら大きな箱を考えても、所詮経験値は箱の底です。
 箱の上の事なんか分かりません。
 人間の能力で積めるのは、所詮紙一枚です。
 紙一枚を積むだけでも失敗します。
 しかし、枚数を重ねれば箱より高くなります。



 進化する必要はありません。
 変化する中に進化は見つかるものです。

 長々、くどくど、だらだらと書き綴った、私の言いたい放題に付き合って頂いたことを感謝致します。
 私の人生で出会った先人者たちの知恵を素直に吸収しながら、自問自答や経験を積みながら、数え切れない失敗も経験しました。
 ある時には、子供の意見にも耳を貸し、自分が持った固定概念を発見する事も度々ありました。
 小学校に上がってから学校で勉強をするようになって、テストを経験するようになります。
 段々と、理性や固定概念を身につけていきます。
 小学生は理性と感性を両方持ち合わせた時期で、その発想も感性による事が多々あります。
 身障者の立場で考えていることも聞かせてもらいました。
 女性の立場から猛打されることもありました。
 それらを素直に吸収していく中で、自論に対して結論が出ないことも何となく分かってきました。

YESはあってもNOは無い
 私は会話の中で、「YESはあってもNOはありません。」と言う言葉をよく使います。
 YESは1点の同調に対して使用できますが、NOは全否定になりますから、私の能力では使用できないと考えています。
その時には、「YESではない。」と答えます。.
 YESではないものは完結していませんから、私の脳裏に宿題として蓄積します。
 宿題の答えは何時か出るのかもしれませんし、出ないのかもしれません。
 そうではなく、持っている事が大事だと考えています。
 宿題を持ち続けている間は自分の考え方が不完全である事になります。
 不完全であるが故に、進化します。

最後に一言。幸せって何ですか?不幸って何ですか?
 ○「あなたにとって幸せとは何ですか?」と質問しますと、 △ちょっと困ったような表情をして「お金がいっぱいあったら幸せです。」とか、 △「五体満足が幸せです。」と色々な答えが返ってきます。
 ○「でも、それが本当に幸せなんですか?」、
 ○「お金持ちのくせに、俺は不幸だと思っている人もいますよ。」・・、
 ○「じゃあ、幸せって何ですか?不幸って何ですか?」、
 △「・・」、
 ○「分からなくなってきたでしょう。」
 ○「同じ事を、幸せって言っている人もいるし、不幸だって言っている人もいますよね。」
 こうだから幸せとか、こうだから不幸なんて、そんな定義はどこにも無いんです。
 言い換えれば、幸せも不幸も無いんです。
 勝手に夫々が思っているだけなんです。
 犬や猫はそういう考え方を知らないと思います。
 じゃあ人間だけなんでしょうか。
 調べたわけではありませんが、ジャングルの奥深くの原住民や、太古の原人達はおそらくそう考えていないのかもしれません。
 私の子供が聞いたら怒るかもしれません。
 よちよち歩きが始まって、当然のように転びます。
 バタン!かなり強烈に転びました。
 一瞬ハット思いましたが、大したことはなさそうなので「ばーか、どじ」と笑ってやりました。
 笑われた子供は、ニターとテレ笑いしながら、すりむいて血のにじんだ膝を「なんじゃこりゃ」といった感じでたたいていました。
 私の子供はその時、「転んだら痛い。」を知らなかったんです。
 あなたは、「幸せと不幸」を何時知ったのでしょうか。
 「幸せと不幸」は何時発明されたのでしょう。
 そんなことなら、自分が勝手に決めていることなら、全部「幸せ」って考えてもおかしくありませんよね。

苦労したり悩んだりしたら考える
 人は生きている間に、いつも苦労したり悩んだりします。
 その時多くの人は、自分は不幸だと考えます。
 自分だけ、神に見放されたのではとか考えます。
 しかしそれは本当に不幸なことなんでしょうか?
 何にも起きない人生を歩んでいる人は殆どいません。
 常にそれがある事が人生です。
 その状況から逃げ出しても、次の場所で必ず同じことに遭遇します。
 その状況を克服すれば、次に同じ事が起こっても苦労や悩みに感じなくなります。
 私は、そんな時いつも『神様、また、でかくなれって言ってんの?俺に何を期待しているの?
 誰か他の人見付けたら?・・しょうがないな、頑張るか。』なんて考えながら人生を前向きに生きようと努力しています。 
 神はいったい私に何を期待しているのか。
 私は常に神に見守られていると信じています。



 超、超、超、プラス思考の私でした。
 遠くの方から家族の声が、「よくまあ、そんな勝手な事が言えるもんだよ、あの馬鹿が!!」

 ”アッ!”元気の種は見つかりましたか?

 未完である自論を公開することには、いささかの抵抗を感じますが、何かの足しにして頂ければ光栄です。
ありがとうございました。